何でも怖い
元彼女の霊

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しかし、ゆっくり考えている暇はありませんでした。

僕の部屋は1Kです。玄関から部屋までの通路にキッチンとユニットバスへのドアがあります。
通路の先はそのまま部屋につながっています。
その部屋の照明が「フッ」と消えました。唐突にです。他に照明は点いてなかったので、全部が真っ暗になってしまいました。
あたりはシーンと静まりかえっています。
脚がガクガク震えてきました。腰に力が入りません。喉が干上がっていくのが分かりました。

626 : 本当にあった怖い名無し : 2012/07/05(木) 00:12:40.94 ID:/fwAWn+v0

「逃げなければ!」
自分に言い聞かせ、勇気を振り絞りました。部屋に背を向け、ドアノブを握り、グッと力を込めました。
しかし、ドアノブが回りません。
もちろん、オートロックなどではありません。さっきまで開いていたのに。
焦りました。急に頭が真っ白になりました。手も震えだし、ドアノブを上手く掴めません。
冷たい汗が首筋を通ります。うなじの毛が逆立つのを感じました。
それでも両手でしっかり掴むと、ガチャガチャと左右に回します。押したり引いたりしてもドアは少しも動きませんでした。

「助けて! 誰か! 助けて!」
今度は大声で叫びました。ドアを拳で叩きながら、何度も、何度も、叫びました。
すると、ドアの向こうで声がしました。
「おい! 大丈夫か!」
Bです。Bの声でした。
「B!? Bか! ドアが開かない! 助けてくれ! 部屋に何か居るんだ!」
Bに助けを求めました。
「なんだって!? 待ってろ! 今開けてやる!」
ドアノブが勝手にガチャガチャと動きだしました。ドアもガタガタと揺れています。Bが外から開けようとしていました。

「おい! びくともしないぞ! 鍵は!? ちゃんと開いてるのか!?」
僕は暗闇の中、手探りで確かめました。チェーンロックはかかっていません。
「鍵はさっきまで開いてた! 閉まってるはずないんだ! 真っ暗で何も見えない! 助けてくれ!」
「落ち着け! いいか! 玄関の電気が点かないか試してみろ! すぐ近くだろ!」
そう言われ、手探りでスイッチを探しました。壁を指でさぐると、よく知った出っ張りにふれました。
「パチ……パチ……」
ダメでした。玄関の電気は点きません。

627 : 本当にあった怖い名無し : 2012/07/05(木) 00:13:41.04 ID:/fwAWn+v0

あたりは相変わらず真っ暗です。
そのとき、何かヒンヤリとした風を感じました。かすかな、かすかな風です。その風は僕の顔に当たっています。
「フー、ヒー……フー、ヒー……」
一定のリズムで音が聞こえ、それと同時に、風を顔に感じます。
ヒタッと何かが頬に張り付きました。ゾッとするほど冷たいそれは、すぐに『手』だとわかりました。
その手が下にモゾモゾと動き、突然、首を掴みました。そして別の手が腕を、さらには足を掴まれました。
どれも氷のように冷たい手です。無数の手が僕を掴んでいました。
「フー、ヒー……フー、ヒー……」
一定のリズムの音が、あちこちから聞こえてきます。前後から、左右から、そして、上下からも。

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