洒落怖
怪人二十面相

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そう言った瞬間、爺さんの足がズルッと滑り、そのまま俺達の方へ転がって来た。

412 3/4 sage 2007/07/05(木) 03:49:45 ID:ZLRMTVul0
ウワッ!と思ったがもう遅い。爺さんは俺達を巻き込んで1階の屋根の上に落下。
そのまま3人で屋根を転がり、その勢いで親父が弾き飛ばされた。
俺は何とか爺さんを食い止めようと思ったが、意外に勢いが強くて回転が止まらない。
アッと言う間に屋根の縁まで転がり、とうとう下に何もなくなってしまった。

俺はその瞬間「死ぬ!」ってマジで思った。だが同時に爺さんを守ろうとも考えた。
結果、俺は爺さんを抱くような形のまま、爺さんもろとも地面に落下。
爺さんは軽いかすり傷程度で済んだが、俺は腕を強く打ち骨を折るハメになった。

その後わかった事だが、爺さんが屋根の上で「確かに頂いた」と豪語していたのは、
床の間に置いてあった北海道土産の木彫りの熊だった。

爺さんはその事件の衝撃のせいか、以来完全に二十面相と化してしまった。
言動もますますヤバく、また騒動起こされたらたまったもんじゃないって考えもあり、
さらに爺さん自体にガンが発覚したので、それから入院生活を送る事になった。

入院後の爺さんは、見る見る内に弱っていった。
だが二十面相のプライドなのか、見舞いに行くといつも大げさな口ぶりだった。
それから3ヵ月の間、俺はいつも小林少年として爺さんと付き合うようにした。

413 4/4 sage 2007/07/05(木) 03:50:45 ID:ZLRMTVul0
ある晩、容態が悪化したと連絡を受け、夜中に家族3人で病院へ駆け付けた。
爺さんは呼吸器のような物を付けられ、すでに意識朦朧とした状態だった。

俺が「爺ちゃん!爺ちゃん!」といくら呼びかけても、何の反応もなかった。
もうダメなんだ・・・と思った。
すると親父が何を思ったか、「おい二十面相!情けないぞッ!」と叫んだ。
俺はともかく親父は普段のらない人だったんで、ちょっとビックリした。
親父は泣きながら「明智小五郎の勝ちでいいのかッ!いいのかッ!」と叫ぶ。
俺もボロボロと涙を流しながら「にじゅうめんそぉーーー!」と一緒に叫んだ。

爺さんは意識を取り戻さないまま、それから30分後くらいに逝ってしまった。
だが、最後の最後で俺の頬を軽く撫でてくれた。
「明智のような名探偵になれよ、小林君!」とでも言っているように思えた。

・・・・・

爺さんが亡くなってから、今まで霊感の無かった俺が幽霊を見るようになった。
ある時は若い男、ある時は年増女。最初は気付かないが、何となくカンでわかる。
すると霊はニヤッと笑って消えていく。「よく気付いたね」とでも言うかのように。

さすが変装の名人。怪人二十面相は懲りずにあの世で張り切ってるようだ。

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