占い・おまじない、呪い
胎児の霊【閲覧注意】

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691 本当にあった怖い名無し sage New! 2013/03/23(土) 20:44:33.06 ID:268xTG1oT
 僕はこの件をまだ誰にも相談しなかった。事故物件であることを知っていながら入居し
た僕に責任の大部分がある。仕方なくコンビニで時間を潰して翌朝部屋に戻る。テレビの
スイッチを入れると問題なくついた。あれは幻聴だったのだろうか。僕はすっきりしない
まま大学に向かった。
 その夜は電気を点けたまま布団に入る。昨夜のような怪奇音は聴こえず。寝不足のおか
げですんなりと眠りにつくことができた。
 僕は風呂場の鏡の前で髭を剃っていた。シェーバークリームには錆びのようなものが浮
いていて、気持ち悪いと思いながらも僕は髭を剃り続ける。
 剃刀を落とす。床で転がった剃刀が浴槽の隙間に入っていってしまう。僕は腹這いにな
って隙間を覗く。
 浴槽の狭い隙間からドス黒く腐った何かが覗いている。隙間から手が伸び僕の腕を掴む。
凄まじい腐臭に吐きそうになりながらも僕は絶叫して抵抗する。腕が隙間に飲み込まれて
行く。
 目を覚ました僕の腕には手の形をした痣のようなものが浮かんでいた。限界を感じた僕
は後日不動産屋に連絡する。
「やはりそうですか。皆同じような事を言うから気味悪く思っていたんですよ」
「詳しい話を聞かせてくれませんか」
 不動産屋の話によると、自殺した女性は輸入代行者から買った違法な薬剤による中絶と
流産した胎児の処理を請け負っていたらしい。女性は風呂場で沢山の胎児を解体し、秘密
裏に処理していたようだ。証拠品は押収されたが女性は自殺した為不起訴処分だったとの
ことだ。吐き気がするような話だ。僕は勿論退居することに決めた。高い金を払って除霊
するほど物件的価値は無く、心霊騒ぎに半信半疑な大家は放置するつもりらしい。でも僕
にはもう関係が無い話だ。

692 本当にあった怖い名無し sage New! 2013/03/23(土) 20:45:25.18 ID:268xTG1oT
 しかし新しい物件が見つかるまで僕はあの部屋に滞在していなければならなかった。そ
の日の内にあらかた荷物を纏めた僕は明日の物件探しに備えて眠ることにした。心身共に
疲れていた僕だが、中々まんじりとできずに色々と考えていた。
 夢の中で僕の腕を掴んだ黒いモノはおそらく自殺した女性だろう。彼女は僕に助けを求
めていたのかもしれない。彼女は今も沢山の胎児達の怨念に縛られ続けているのだろうか。
 胎児達は深い暗闇の中で命を落とした。胎児達は何も見たことが無いし、何も聞いたこ
ともない。全くの無知だ。自分の姿も知らない。自分が何であるかさえも解らないまま死
んだ。
 背筋に冷たいものが走る。胎児の霊はどんな姿形をしているのだろうか。言葉も知らな
いのに思考できるのか。自分を人間だと思っているのだろうか。僕の体は知らない間に震
えていた。もしかしたら、胎児の霊は僕が考えていたよりも得体が知れなくておぞましい
存在なのではないか。
 黒いモノが浴槽の隙間から半身を出してのたうっている。僕はもうこの黒いモノに対す
る恐怖を殆ど失っていた。
「コワイコワ イコワ イコワイ」
 黒いモノがズル、ズル、と排水溝の中に引き摺られていく。黒いモノを支配している感
情はおそらく原始的な恐怖だけであった。僕も同じ恐怖にガタガタと震えている。
 黒いモノは排水溝に完全に飲み込まれてしまった。暗い配管の底から耳障りな音が響く。
そして産声。排水溝から何かが這い出てこようとしている。見たくないのに目を離せない。
逃げようにも体が動かない。発狂しそうになった僕は涙を流しながら絶叫する。
 目が覚めた時、電気をつけていたはずの部屋は真っ暗だった。
 ゴポ……。僕は脇目も振らずにただ逃げ出した。

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