洒落怖
復讐

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347 本当にあった怖い名無し sage New! 2013/01/25(金) 22:01:10.55 ID:+KkaE0hI0
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今度は恐怖に思考が停止していると、兄はうるさく音が漏れる電話ボックスに手を伸ばした。
ガラスに張り付くように掌を当てる。
ドンッ…!!鈍い音がした。兄がガラスを蹴ったらしい。ドン、ドンと更に数回蹴飛ばしている。ベルの音は鳴り止まない。
「ははは、苦しいだろう。毒ガスはお前をちゃんと殺してくれるよ」
呼び出し音が大きくなった気がした。頭に響く嫌な音。その音に向かい兄は罵声を浴びせる、
「早く死ね、そしてなくなれ、もうお前は殺しただろう」
この死に損ないが、と続く。
今まで兄の口からは聞いたことの無い言葉が溢れていた。

348 本当にあった怖い名無し sage New! 2013/01/25(金) 22:02:26.36 ID:+KkaE0hI0
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何分たっただろうか。俺は耳を塞いで俯いていた。電話のベルも兄の言葉もこれ以上聞いていられなかった。
気づくと音は止んでいた。暗い足元から電話ボックスに視線を戻すと兄が中を雑巾で拭いていた。
最後にペットボトルに入った水で中を洗い流すと洗剤の容器や雑巾、ガムテープを一通りゴミ袋に詰め、トランクに放り投げた。
「はー、さみー」
手をこすり合わせて助手席に乗り込んできた兄は、もう用事は済んだからコンビニでも寄って○○寺に行こう。
まだ鐘突きやってるといいけど、そう言って先を促した。

349 本当にあった怖い名無し sage New! 2013/01/25(金) 22:04:10.77 ID:+KkaE0hI0
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その後、兄は除夜の鐘を一人で20回も突いたり、雪だまを後ろから投げつけてきたりと無邪気にはしゃいでいた。
ただ厚手のマスクを付けっぱなしでいたことには家に帰って洗面所の鏡を見るまで気づかなかったようだ。
コンビニ店員や他の参拝客に変な目で見られたのはそのせいかと一人納得した後、何故教えてくれなかったのかと一発殴られた。
理不尽だと思ったがあの兄を見た後では言い返すことができなかった。
久しぶりに聞いた鐘の音は大変厳かで、あの響きの良さは小学生のころは理解できなかったな、
とか非常に満足した様子で兄は一人酒盛りを始めた。一緒にどうかと誘われたが俺はとてもそんな気にはなれず、
除夜の鐘の音なんかが耳に入らないほどに頭にこびりついてしまった電話の呼び出し音と、兄を睨む住職の表情を思い返していた。

350 本当にあった怖い名無し sage New! 2013/01/25(金) 22:05:59.70 ID:+KkaE0hI0
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翌日、1月1日、ためらわれたが気になって仕方なかったので昨日の出来事はなんだったのかと兄に聞いてみた。
「幽霊を殺したった」
「誰の幽霊かて?強いて言うなら俺の、でも何か元はあるんだと思う」
「電話はあの公衆電話自身に掛けた。公衆電話にもちゃんと個別の番号があるのは知ってるだろ?」
「お前もあの電話ボックスの噂話くらい聞いたことあるよな」
「こっちから掛けても繋がることがあるってのは知られてなかったのかも」
「俺は話したことある、自分の寿命を決められた」
「いや、とっくに過ぎてる。3年前の夏だった」
「まぁ今回のは復讐だよ、寿命を奪った復讐」
「それよりパチンコ連れてけ、お前の店の設定を教えろよ」

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