洒落怖
普通の子に戻れた日

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とおうとう諦めたお婆さんは、奥からジュースを取り出してきました。
スイカのジュースみたいな色で、なんだかどろりとしています。
「外は日が当たってるから、でれんから」と言われ、
私はこれさえ飲み干せば帰れると思い、頑張って飲みました。
甘さベースでしたが、妙に生臭くて、生の小麦粉みたいに苦かったです。魚のてんぷら作った後の
生の天ぷら粉ってあんな味がするんじゃないでしょうか?
その後お婆さんは、「迎えに行くから」とか「何とかさんに頼んで連れてきてもらうから」
とか言っていたようですが、私はもう恐ろしくて、一目散にその家を去りました。

松林から出て、うちに帰る最中に、鼻血が出てきました。
「厄介だなぁ」と思って、手で血を止めようとすると、
手に何か白くて長いものがついています。これは前、猫の死体でも見た!蛆だ!
鼻からは蛆の混じった血が流れてきます。口の中にも血が流れ込んできて、
意外と力の強い蛆が上あごと舌の間で暴れます。
私蛆が湧いてる!腐ってる!死んじゃう!
焦った私は近くにあった家に飛び込みました。

近所の家が家族と、救急車を呼んでくれたことは覚えています。
それから私は血便と止まらない鼻血、脱水症状で何日か入院しました。
驚いたことは、私が松林に入ってから、10分とたっていなかったことです。
私の話は全て作り事とされ、何か悪いものを食べたのだろうと済まされました。

その後、見違えるように「普通」になった私は、前のように不審な行動をすることもありません。
時間や距離を無視した移動もしなくなりました。
正直、上の話も夢か何かだったような気さえしてきます。
ですが、目のおかしいおばあさんと、蛆交じりの血ははっきりと記憶に焼きついています。
それからあの松林に近付いたことはありません。帰ってきたと思われては困りますから。

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普通の子に戻れた日