洒落怖
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大学祭も終わり寒くなり始めた頃、Nを見掛けなくなった。週2、3コマ被ってる講義にも来なくなった。共通の知り合いに聞いても最近連絡を取っていないとのこと。
少し気にはなったがメールはしなかった。掲示板も見なくなっていた。そのまま年が明け、後期試験も終わり春休みが始まるという2月初め。Nからメールがきた。会ってくれないかという。
今更なんだと思ったが、メールを返さないでいると電話までかかってきた。よく判らないがとにかく切羽詰まった様子だけは伝わってきて、承知してしまった。
翌日大学近くの喫茶店で会った。およそ2ヶ月ぶりに見るNはげっそりやつれていてしょぼくれてザ・不健康て感じだった。開口一番、Nは言った。

「変な夢見るんだ」
「はあ?」
「出てくるんだよ。山なんだ。ずっと道が続いて。それで俺、今にも」
「ちょっとちょっと! 意味が判らんて。一体どうしたんだよ。ちゃんと説明してくれ」
俺が言うとNはおもむろに水をガブリと飲んだ。そしてしばし俺を見つめて、さっきとは打って変わってささやくような声で訊いた。
「お前まだ掲示板観てるか?」
「いいやもう長いこと観てない」
「観てくれないか」
「……別にいいけど」
久しぶりの掲示板は相変わらず荒れていて見るも無惨だった。
「開いたよ?」
「しばらくログを遡ってみて。12月半ばくらいまで」
誹謗中傷や下らない下ネタが視界を流れていく。やがて12月に入った。
「来たぞ」
「そこに話があると思うんだ」
「何て話?」
「山でドライブしてたらとかいう出だしの……」
「ちょっと待ってね……ああ、あった」
「それ読んでみて」

夏に友人たちとドライブしていたとき起こった話。
行ったことのない他県の山の中を当てもなく走っていた。緑が鮮やかで風が心地よかった。野郎ばかりなのに歌まで歌い出したりして。
同じような曲がりくねった道を行くこと数十分。あるカーブを曲がったとき一人が声をあげた。
「あ、何あれ!」
少し先に待避所みたいなスペースがあってそこに妙なものがあった。
「ガラス張りの……部屋?」
「やけに細長いけど」
「行って見ようぜ」
俺たちは待避所に車を入れて降りた。
それに近づく。
「床屋?」
俺はつぶやいた。透明な外壁の全長10メートルほどの部屋の中に理容椅子と思しきものが4脚ほど並んでいる。人の姿は見えない。向かって左端に手押しのドアがあった。
「へーこれすげえじゃん」
お調子者の一人が駆け寄って行った。俺たちもぞろぞろついていく。
ドアはあっさり開いた。中にはレジカウンターやロッカー、シャンプー台などがあり明らかに理髪店のようだった。
空調が作動してる様子はなかったが不思議と暑くはなかった。
「ちょうどいいじゃん。みんな座れよ」
お調子者が言うなり一番手前の椅子に座ってみせた。
誰もいないし俺らも座ってみた。正面に車の通らない車道が見える。セミの声。小鳥の囀り。しばしボーっとしていた。続く

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