洒落怖
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223 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2014/07/26(土) 22:30:51.87 ID:J7jrwpsA0.net
以下その話。

夏に友人たちとドライブしていたとき起こった話。
行ったことのない他県の山の中を当てもなく走っていた。緑が鮮やかで風が心地よかった。野郎ばかりなのに歌まで歌い出したりして。
同じような曲がりくねった道を行くこと数十分。あるカーブを曲がったとき一人が声をあげた。
「あ、何あれ!」
少し先に待避所みたいなスペースがあってそこに妙なものがあった。
「ガラス張りの……部屋?」
「やけに細長いけど」
「行って見ようぜ」
俺たちは待避所に車を入れて降りた。
それに近づく。
「床屋?」
俺はつぶやいた。透明な外壁の全長10メートルほどの部屋の中に理容椅子と思しきものが4脚ほど並んでいる。人の姿は見えない。向かって左端に手押しのドアがあった。
「へーこれすげえじゃん」
お調子者の一人が駆け寄って行った。俺たちもぞろぞろついていく。
ドアはあっさり開いた。中にはレジカウンターやロッカー、シャンプー台などがあり明らかに理髪店のようだった。
空調が作動してる様子はなかったが不思議と暑くはなかった。
「ちょうどいいじゃん。みんな座れよ」
お調子者が言うなり一番手前の椅子に座ってみせた。
誰もいないし俺らも座ってみた。正面に車の通らない車道が見える。セミの声。小鳥の囀り。しばしボーっとしていた。続く

「はっ」
不意に目が覚めた。いつ眠ってしまったのか。思わず椅子から立ち上がった。外はまだ明るい。他の連中はまだ寝ている。
「おい……おい!」
起こすと皆ぼんやりとして周りをキョロキョロしながら立ち上がった。
「何で寝たんだろ」
「何か気持ちいいんだよな。さすが床屋の椅子だけある」
俺らは外へ出た。むわっっと熱気が肌を撫でてくる。
「結局何なんだろうな」
車に戻りハンドルを握ると助手席に座りながら訊いてきた。
「期間限定とかじゃね。で昼休みに買い出しに行ったとか?」
後ろで寝そべったお調子者が言う。
それぞれ勝手なことを言いつつその後はファミレスでだべった後TSUTAYAに寄って、夜10時頃、俺は家に向かって一人車を走らせていた。
ふとルームミラーで何かが動くのが見えた。後部座席に誰かいる? 俺は思わず路肩に寄せて後ろを確認した。何もいない。
「びびらせんなよ~」
わざとらしく独り言を言いながら帰宅した。

「読んだけど」
「その後のレスも観てくれ」
ログをスクロールしていく。例によって批判というより中傷に近いレスが続いている。曰わく「オチがしょぼ過ぎ」「地名ちゃんと書け」「セリフが不自然」「カス」「死ね」etc.
Nのものらしき長文の批判もある。不必要な煽りや罵倒を除いて要約すると「山の中にガラス張りの床屋なんてある訳ない。リアリティがない」という感じ。
「この長文お前だろ?」
「その後も読んで」
「後もっていつまで……」
言いながらログを追っていくと画像が貼ってあった。文章はなし。クリックする。雑草だらけの中に透明な部屋があった。理容椅子が2脚ばかり並んでいる。
「あ、床屋の画像があるじゃん」
「それだよ」
「語り手が証明のために貼ったってこと?」
「判んないけど、それで俺、謝れば良かったんだけど」
Nらしくない弱気なセリフに少し驚いた。掲示板に目を戻す。画像に対して不気味がるレスがいくつかついていたが、その後にまた長文で貶めるレスがあった。Nだろう。
今度はほぼ中身のない悪口だった。明らかに引くに引けなくなりムキになっているぽかった。しかしそれ以降は広がらず、また別の投稿がなされそれに対する口撃にシフトしていた。続く
「一通り読んだけど」
「その時はすぐ忘れたんだ。でも先週になって突然夢に見るようになって」
「さっきの山道の夢ってこの話に出た山道ってこと?」
「多分そうなんじゃないかと思う。車に乗って走ってるんだ」
「お前が運転してんの?」
「その辺がはっきりしないけど多分違う。後ろに乗ってるぽい」
「他に誰か乗ってんの?」
「うん。そんな気配がする」
「それ投稿者ってこと?」
「そんなん知るかよ。で、ずっと緑の山の中を走ってるんだ。」
「カーブばっかり?」
「そうそう。同じような感じの連続なんだけど……」
「だけど?」
「判るんだよ。近づいてるのが」
「ガラス張りの部屋に?」
「ああ。もうすぐ……ここ曲がったらあれが姿を現すんじゃないかって。そしたらたまらなくなって車から飛び降りたくなって。でも体は動かなくて。掴まれてる感じもあって」
「何日も観てるのか?」
「毎日じゃないけどもう5回くらい観た」
Nは小刻みに震えているようだった。見開いた目が血走っている。
「徹夜したのか」
「今夜辺り着いちゃうんじゃないかと思ったら眠れなくて」
「呪いとか? とりあえず謝った方がいんじゃね」
「謝罪レスはした。でももう手遅れぽくて。その後も止まらないし」
その後もNは己の恐怖を切々と語っていたが俺にはとんと実感はなかった。Nが今夜一緒に居たがる感じなのを振り切って別れた。
正直信じてなかったし、俺に会いたくてでっち上げたんじゃないかとすら疑っていた。それでも帰宅してシャワー浴びてさっぱりしてみると、ちょっと気分が変わって少し真剣に考えてみようかと思えてきた。
例の話をもう一度読み直してみる。
確かに後部座席で動く影を観ただけなんてしょぼすぎるオチだ。しかし……。何度か読み返していると何やら違和感がある。どこかおかしい。続く

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