宗教
御守り袋

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友人は数日凹んでいて、俺も何度か「いつまで鞄にあったか、覚えてないか?」と聞かれたが、
結局取り返せなかった後ろめたさで、俺は結局、友人にその話をしなかった。
上司も他の同僚も、そんなことを聞ける仲じゃなかったから、友人はやがて諦めて
しまったようだった。

それから少しして、そのお守り泥棒したグループの1人が、入院した。
精神の方の病院だとか噂が流れてたが、詳細は知らない。

さらに別の1人がヤクザ関係のトラブルにあった話が社内に流れ、直後に会社を辞めた。
総務の奴は、事務処理が残ってるのに電話してもメールしても繋がらない、
実家にかけたら親も連絡できないと泣きつかれた、と零していた。

それどころか、会社自体に妙な情報が社内で流れ始め、社員が浮き足立ってきた。
乱れ飛ぶ噂は、取締役がメンヘルでやばいとか、取引先が血相を変えて「お宅とは縁を切らせてくれ」と言って来たとか、
洒落にならないものばかり。
他社の出入りの営業(こっちが顧客)を社に呼んだら現れず、半泣きで電話してきて
「頼むから外でお願いします、クビが飛ぶって言われても怖くて入れません」と言われたなんてものまであったとか。
少しずつ、誰かが辞めてく頻度が上がってた。

716 本当にあった怖い名無し sage 2009/03/12(木) 23:05:00 ID:Rxwynwh80
そんな時に、友人に誘われて飲みながら話をした。
友人は既に転職先を決めていた。
守り袋をなくして数日後に、死んだ彼女が夢に出てきたそうだ。
彼女は怒ってなくて、ただ「ごめんね、ごめんね」としきりに謝っていたそうだ。
「私には止められない。凄く怒ってる。あなたが出るまで待ってくれないかも
しれないの。あの会社から早く出て。お願いだから。それまでは私が絶対に守るから」
泣きそうな顔で言った彼女の真剣な表情が目覚めてからもハッキリ意識に
残っていて、友人は転職を考えたのだと言う。
「信じてくれないかもしれないけど、俺はお前も辞めた方がいいと思う。
あいつがあんな青い顔したのは昔も見たことない。会社、本当にやばいんだと思う」
真顔で言われて、俺は半信半疑だった。

2日くらいして、今度は泥棒グループの1人に呼ばれた。
ぼそぼそした調子で俺に「助けてくれ」と言ったそいつの顔は、変にやつれていた。
「あの守り袋はやばいって解ってたのに、深く考えずに手をだして後悔してる。
 あの日から嫌な気配がしてる、それが今は会社にずっといる。俺は実行犯だから、
 多分、辞めても追っかけてくる。アイツに謝りたい」
詳しく聞いてみたら、そいつは少し霊感があって、あの日から物凄くヤバい気配を
感じるのだと言う。
「一度だけまともに見た。黒人の中年の女だった。ただの霊じゃないと思った、本当に怖かった。頼むから助けてくれ」
頭を下げられて「とりあえず話してみてやる」と言ったが、良く考えてみると
変だと思った。友人の彼女の実家は、遠いが日本国内だったから。
既に転職してた友人に連絡を取ってそれとなく聞いてみたが、
彼女もその両親も日本人だったとのこと。
しかも考えたら、20代で亡くなった彼女が中年の幽霊になるのも変だ。
同級生だった友人が、まだ中年になってないのに。

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