田舎・地方の習慣
首の紋章

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港に帰ってくると、仲間の漁師から「大漁だな」とからかわれたりしながら、
この顔に見覚えのある奴はいないかと村中聞いて回った。
結局、このホトケさんたち2人の身元は分からない。

394 名前: 四、 2006/07/28(金) 22:58:29 ID:C+FpdjMT0
しょうがなく、祖父は自分の家族でこの二人をオエビスサンとして道辻に埋めることにした。
着衣を脱がして装束に着替えさせる際、
男の着衣から鉄製の薄くて小さな箱があり、
中から一枚の紙キレが綺麗な状態で出てきた。
どうやらこの男は心中で海に飛び込んだらしい。
紙には心中相手の女に対する気持ちが書かれていて、
「愛してる」とか、「生まれ変わっても一緒にいよう」などと、
読んでるこっちが恥ずかしくなったそうだ。
そしてもう一つ気付いたことがある。
男と女の首のうなじの辺りに入れ墨が彫ってあった。
それは両方とも同じ入れ墨で、薔薇の模様だった。
「これはもしかしてと・・・」祖父は家族と相談した結果、
二人を一緒の塚に祀ることにした。
その後、豊漁はこれといって続かなかったけれど、
祖父の嫁、つまり私の祖母が子供を身籠もったことで一家は大喜びして、
これもエビスサンのお陰だと、暫くは塚にお供えを欠かさなかったそうだ。

395 名前: 五、 2006/07/28(金) 23:00:43 ID:C+FpdjMT0
何か怖いような目出たいような変な話だというのが、話を聞いた直後の私の感想だった。
祖父は「どうだ、怖かったろう」とクシャッとした顔を余計にしわくちゃにしながら笑った。

暗くなったので港へ戻った。
家に帰ると仏壇と神棚に今日も無事に帰ることができましたと祖父と一緒にお祈りする。
その時、ふと気が付いたことがある。
祖父の父と母の遺影の他に、後ろ側に1人のおかっぱ頭の女の子の写真があった。
「この人誰?」祖父にと聞くと、「娘だよ」という。
はて、その時まで父に姉妹がいたなんて聞いたことがない。
私の不思議がってる顔をみた祖父が説明を付け加えてくれた。

「この子は私の娘で○○(私の名前)のお父さんの双子の妹だよ。
首の裏に二人ともに大きなホクロがあるんだ。」
そういって祖父はまたワハハと笑った。

398 名前: 六、以上 2006/07/28(金) 23:27:45 ID:C+FpdjMT0
その後、父親に確認したところカナという妹がいたことは間違いないらしい。
病気でまだ10歳も行かないうちに病気で亡くなったそうだ。
父に恐る恐る首のホクロについて聞くと、
「ああ、そういやあったな。でも双子だから当たり前だろ」と言われた。
それはそうだ、双子なら同じ位置にホクロがあるのは不思議ではない。
ただ、私は祖父の話を聞いたためか、どうも気味が悪い。
夜中に、懐中電灯を持って祖父の言っていた塚にやってきた。
そこには大夫風雨に晒された大きな丸い石が置いてあった。
そして電灯で照らしてみると、そこに二人分の名前が彫ってある。
ハッキリとは読み取れないが、
そこには私の父の「政次」という名と、父の死んだ妹の「カナ」が刻んであった。

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