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B「fそいあlzpwくぇrc」
もはやBが叫んでいる言葉が分からなかった。
一部聞き取れたのは、繰り返しBの口から発せられた「○○(人名)」だけだった。
腰を抜かしてたAが叫びながら勝手口から逃げ出した。
パニック状態だった俺とCも、Aの後を追った。
廃屋の中からは相変わらずBの何語かも分からない怒号が聞こえていた。
Aは叫びながらもう1軒の廃屋の戸をバンバンバンバン叩いていた。
俺とCはAにBを助けて逃げようと必死で声を掛け続けたが、
Aは涙と涎を垂らしながら、バンバン戸を叩き続けた。
B「おい4くぉ30fbklq:zぢ」
Bは相変わらず葛篭の部屋で叫んでいる。
×印に打ち込まれた木の板の隙間から、
Bが葛篭から何かを取り出しては暴れている姿がチラチラと見える。
そして、Bの居る廃屋の玄関には、明らかにBでは無い人影が、
Bの居る部屋の方に向かってゆっくりゆっくり移動してるのが見えた。
バンバンバンバンバンバン
カタカタカタカタガタガタガタガタガシャンガシャンガシャンガシャンガシャン
Aが戸を叩いてるもう1軒の廃屋は、
Aがバンバン叩いているのとは別の振動と音がしはじめていた。
そしてAも、B同様「○○!」とある人名を叫んでいた。
Bのいる部屋を見ると、Bのそばに誰かが居た。
顔が無い。いや、顔ははっきりと見た。
でも、印象にまるで残らない、のっぺらぼうのようだった。
ただ、目が合っている、俺のことを見ていることだけはわかった。
目なんてあったのか無かったのかすらもよくわからない顔。
俺はそいつを見ながら失禁していた。
限界だった。
俺はCの手を引き頭にもやが掛かったような状態で廃屋を背に走り、
次に記憶に残ってるのは空を見ながら製材所あたりの県道を集落に向けてフラフラ歩いているところだ。
泣きじゃくるCの手を引き、フラフラと。
集落を出たのは昼前だった。
あの廃屋への往復や廃屋内の散策を含めても、せいぜい1時間半程度だったろうと思ったが、
太陽は沈み山々を夜の帳が包もうとしている頃だった。
集落に着いた頃には空は濃い藍色になっていて、
こんな時間まで戻らない子供を心配していた集落の大人たちに怒られた。
失禁したズボンやパンツは、すっかり乾いていたように記憶している。
周りの大人たちは当然仲の良かったAB兄弟が帰ってきてない事にすぐに気付き、俺たちを問い詰めた。
俺もCも呆然自失となってたのでうまく説明できなかった。
4人で探検をしたこと。
墓の向こうの鎖の道へ行ったこと。
そこに廃屋があったこと。
廃屋で妙な現象が起こったこと。
AとBがおかしくなったこと。
俺とCだけで逃げ帰ってきたこと。
俺がとぎれとぎれに話をすると、大人たちは静かになった。
青い顔をして押し黙る大人たちの中で一人だけ、
真っ赤な顔で俺たちをにらむ人がいた。