師匠シリーズ

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378 鏡   ◆oJUBn2VTGE ウニ 2006/12/02(土) 14:11:29 ID:Q8VwWIU/0
Coloさんは勘が鋭い。大学のサークルの先輩でもある俺のオカルト道の師匠には、そのやっかいごとを伝えていたが、恋人を巻き込みたくないのか師匠はColoさんには教えてないはずだった。
はずなのに、なにか勘づいているような気配がしていた。
3人で連れ立ってマンションの一室を出ると外はやたら寒く、俺は帰りませんかと何度か言ったが女性二人がノリノリだったため無視され、繁華街のほうへずんずんと歩を進めていった。
ところが、その途上でみかっちさんのPHSが鳴り、みかっちさんは電話口で何事かわめいたかと思うと走ってどこかに行ってしまった。
俺は面くらうとともにどこかほっとして、「二人になったし、帰りましょう」
と言った。
しかしColoさんは首を振ると「来なさい」と有無を言わせぬ口調で俺を促した。
深夜1時近くになっていたが、まだ明かりの消えない華やかな通りからすこし外れて、薄暗い裏通りを進むと「学生ローン」とかかれた看板のある小さなビルの前に立ち止まった。
占いの店らしき看板も出ていないが、Coloさんはここだと言う。
そして地下へのびる階段をずんずんと降りて行くのだった。
地下には「占い」とだけかかれた怪しげなドアがあり、Coloさんは躊躇なく押し開けて俺を手招きするのだった。
薄暗い店内には人の気配がなく、厚手の黒い布で遮蔽されたカウンターらしきところに、人の手が見えた瞬間は思わずビクッとした。
Coloさんがその布越しになにか話しかけると、白い手は店の奥を指差したかと思うとスゥっと消えるように引っ込んでいった。
狭い店内は黒で統一され、天井の照明も黒い布で覆われていたので目が慣れるまでは鼻を摘ままれてもとっさにはわからなかったかもしれない。

379 鏡   ◆oJUBn2VTGE ウニ 2006/12/02(土) 14:12:40 ID:Q8VwWIU/0
「こっち」
とColoさんが俺の手をつかんで引っ張り、店の奥へと向かった。
奥には黒い布で隠されるようにしてドアがぽつんとあり、切れ目の入った厚手の生地を掻き分けるように中を覗き込んだかと思うと、Coloさんは「ここ」
と言って俺を促すのだった。
流されるようにここまで来てしまったが、なんだかすべてが薄気味悪い。
『困難の正体が映る鏡』
そんなものが本当にあるんだろうか。とは思わなかった。
そんなものを見ていいんだろうか。
そう思ったのだった。
俺はColoさんに押し込まれるようにドアの中へ入った。
中はさっきまでよりも暗い。背後では切れ目の入った布が入り口を塞ぐようにバサバサともとに戻る音がした。
暗くても、部屋が狭いことは直感でわかる。その一番奥に人影が見えた。
ビクビクしながら近づくと、やはりそれは俺だった。
鏡面であることを確認しようとして手を伸ばそうとするが、一瞬頭がくらくらするような感覚がして、それをすることは躊躇われた。なにか、説明しがたい違和感のようなものがあった。
『困難の正体』
それは自分自身だ。
そんなことを悟らせるための店なのだろうかと、ふと思った。
全身が映っている大きな鏡の中の腕時計に目を落とすと、短針は1時のあたりをさしていた。
そのときである。頭の中にくぐもったような耳鳴りがかすかに響き始めた。
まずい。
その音が、心臓を早鐘のように乱れさせる。

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