洒落怖
看護婦寮

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そして翌日、約束の時間になっても友人は現れませんでした。
約束の時間から1時間ほど過ぎたころ電話があり、それは友人からで病院からでした。
話を聞けば、昨日深夜、今日ここに来るもう1人と車で移動中に気分が悪くなり運転に集中できなくなり、壁に衝突したとのことでした。
怪我は大したことはなかったらしいのですが、引越しを手伝ってもらえなくなったことで動揺して、初めの異変に気付きませんでした。
家具といっても大きな物はベッドとタンスのみだったので、すべて分解して一人で車に乗せ、私の車はワゴンでしたが、4往復でなんとか自力で家具などを運び終えたときには、すでに夕方5時でした。
それから荷物を自分の部屋に運び入れ、家具などを組み立てて、とりあえず引越しが完了したときには、昨日寝ていなかったため、すでに体力の限界に達していました。
食事も取らずに倒れるように横になり深い眠りに入りました。

それから何時間経過したころでしょうか。
深夜、苦しくて息が出来ない。
何か重い物が体の上に乗っているような感覚。
ダルくて体も動かない。
きっと疲れているからに違いない。
引越しで精神的にも肉体的にも疲れているのだと考え、また深い眠りに入りました。
そして朝を迎え、胸に痛みがまだ残っているのは、家具が重かったための筋肉痛だと考えることにしました。

その晩、友人宅で夕食とシャワーを済ませて、深夜に寮に着きました。
しかしあのなんとも表現しにくい不気味さ。
正面玄関の厚いガラスの引き戸の奥に別世界が広がっているような。
そのガラスに映った自分はその世界に閉じ込められてるようだった。
しかし、2階には自分の部屋があるし外にいてもしかたないので、突き進み階段を登って自分の部屋の正面へ。
なぜか怖くて自分の部屋のドアを開けることが出来ない。
普通なら何もない廊下に一人で立っている方が怖いと感じるのでは。
結局、部屋に入っても何も起こらなかった。
『明日からは玄関や廊下は電気をつけっぱなしにしておこう』
と考えながら寝ました。

しばらくして、また昨日と同じように胸を何かに押されている感覚で目が覚めました。
それも規則的に胸の上方、下方と交互に。
しかも昨日と違うのは、どこからか低いうめき声のようなものが聞こえる。
目を開いてなくても確実に誰かが部屋の中にいるのがわかる。
怖くて目は開くことはできない。
すでに金縛りで体を横にすることもできない。
ただ、耳から聞こえる音と方向、胸から伝わる何かの重さだけで答えが出た。
音は明らかに人の声。
それも二人。
一人は、お経を読んでる。
もう一人は、はっきり聞き取れない独り言。
胸に掛かる重さは声の方向と移動でその二人が並んで交互に、上下移動しながら私にしかも正座で乗りかかっているというものです。
この結論に達したと同時にますます重くなってきて、思わず目を開いてしまいました。
そこにいた者は胸の上で横に正座をしている髪の長い女性でした。
そして天井方向に移動して浮いている老婆でした。
私が目を開けたのに気付いてか、その二人が私を睨み付けます。
そのあまりの形相に二度と目を開けるまいと。
そしてその重さに耐えるしかありませんでした。
二人が居なくなったと同時に私も疲れて寝てしまいました。
気絶といったほうが正しいでしょうか。

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