師匠シリーズ
将棋

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916 将棋  7/8 ウニ 2006/02/22(水) 20:09:16 ID:CqBHiC0Y0
「死んだのは1945年2月。戦場で負った傷が悪化し、日本に帰る船上で亡くなったそうだ」
びくっとする。
俄然グロテスクな話になって行きそうで。
では、師匠の祖父と手紙将棋をしていたのは一体何だ?
『僕は亡霊と指したことがある』という師匠の一言が頭を回る。
師匠は青くなった俺を見て笑い、心配するなと言った。
「その後、向こうの家と連絡をとった」
こちらのすべてを明らかにしたそうだ。すると向こうの家族から長い書簡がとどいたという。
その内容は以下のようなものだった。

祖父の戦友は、船上で死ぬ間際に家族に宛てた手紙を残した。その中にこんな下りがあった。
『私はもう死ぬが、それと知らずに私へ手紙を書いてくる人間がいるだろう。その中に将棋の手が書かれた間抜けな手紙があったなら、どうか私の死を知らせないでやってほしい。そして出来得れば、私の名前で応答をしてほしい。私と将棋をするのをなにより楽しみにしている、
大バカで気持ちのいいやつなのだ』

917 将棋  8/8 ウニ 2006/02/22(水) 20:10:07 ID:CqBHiC0Y0
師匠は語りながら、盤面をすすめた。
4一角
3二香
同銀成らず
同金
その同金を角が取って成ったとき、涙が出た。
師匠に泣かされたことは何度もあるが、こういうのは初めてだった。
「あと17手、年寄りどもの供養のつもりで指すことにしてる」
師匠は指を駒から離して、ここまで、と言った。

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