師匠シリーズ
四隅

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777 名前: 四隅 2006/08/28(月) 20:28:50 ID:9j0TgqFm0

夢の中で異様に冷たい手に右肩をつかまれて悲鳴をあげたところで、次の日の朝だった。
京介さんだけが起きていて、あくびをしている。
「昨日起ったことは、京介さんはわかってるんですか」
朝の挨拶も忘れてそう聞いた。
「あの程度の酒じゃ、素面も同然だ」
ズレた答えのようだが、どうやら「わかってる」と言いたいらしい。
俺はノートの切れ端にシャーペンで図を描いて考えた。

ACoCo    B京介

Dみかっち  C俺

そしてゲームが始まってから起ったことをすべて箇条書きにしていくと、ようやくわかって来た。酒さえ抜けると難しい話じゃない。
これはミステリーのような大したものじゃないし、正しい解答も一つとは限らない。俺がそう考えたというだけのことだ。でもちょっと想像してみて欲しい。あの闇の中で何がおこったのか。

778 名前: 四隅 2006/08/28(月) 20:29:55 ID:9j0TgqFm0

1 時計
2 時計
3 時計
4 反時計
5 時計
6 時計
7 時計
8 時計
9 時計
10 時計
・・・・・・

俺が回った方向だ。
そして3回目の時計回りで俺はポケットに入った。
仮にAが最初のスタートだったとしたら、時計回りなら1回転目のポケットはD、そして同じ方向が続く限り、2回転目のポケットはC、3回転目はB、と若くなっていく。
つまり同一方向なら必ず誰でも4回転に一回はポケットが来るはずなのだ。
とすると5回転目以降の時計回りの中で、俺にポケットが来なかったのはやはりおかしい。
もう一度図に目を落とすと、3回転目で俺がポケットだったことから逆算するかぎり、最初のスタートはBの京介さんで時計回りということになる。1回転目のポケット&2回転目のスタートはCoCoさんで、2回転目のポケット&3回転目スタートはみかっちさん、そしてその次が俺だ。俺は方向を変えて反時計回りに進み、4回転目のポケット&5回転目のスタートはみかっちさん。そしてみかっちさんはまた回転を時計回りに戻した
ので、5回転目のポケットは・・・・・・
俺だ。
俺のはずなのに、ポケットには入らなかった。
誰かがいたから。

779 名前: 四隅 2006/08/28(月) 20:30:29 ID:9j0TgqFm0

だからそのまま時計回りに回転は続き、そのあと一度もポケットは来なかった。
どうして5回転目のポケットに人がいたのだろうか。
「いるはずのない5人目」という単語が頭をよぎる。
あの時みかっちさんだと思って遠慮がちに触った人影は、別のなにかだったのか。
「ローシュタインの回廊ともいう」
京介さんがふいに口を開いた。
「昨日やったあの遊びは、黒魔術では立派な降霊術の一種だ。
 アレンジは加えてあるけど、いるはずのない5人目を呼び出す儀式なんだ」
おいおい。降霊術って・・・・・・
「でもまあ、そう簡単に降霊術なんか成功するものじゃない」
京介さんはあくびをかみ殺しながらそう言う。
その言葉と、昨日懐中電灯をつけたあとの妙に白けた雰囲気を思い出し、俺は一つの回答へ至った。
「みかっちさんが犯人なわけですね」
つまり、みかっちさんは5回転目のスタートをして時計回りにCoCoさんにタッチしたあと、その場に留まらずにスタート地点まで壁伝いにもどったのだ。そこへ俺がやってきて、タッチする。
みかっちさんはその後二人分時計回りに移動してCoCoさんにタッチ。そしてまた一人分戻って俺を待つ。
これを繰り返すことで、みかっちさん以外の誰にもポケットがやってこない。
延々と時計回りが続いてしまうのだ。
「キャー!」という悲鳴でもあがらない限り。

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