師匠シリーズ
四隅

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775 名前: 四隅 2006/08/28(月) 20:27:45 ID:9j0TgqFm0

次の瞬間異常な硬さが指先を襲った。指をさすりながら、ゾクッとする。
壁? ということはポケット? そんな。俺からスタートしたのに・・・・・・
呆然とする俺の左肩を何者かが強く掴んだ。
京介さんだ。
俺は当然、壁に接している人影を想像して左手を出したのに。
なんて人だ。
暗闇の中、壁に寄り添わずに立っていたなんて。
あるいは罠だったか。
人の気配が壁伝いに去っていく。
悔しさがこみ上げて、残された俺は次はどういくべきか真剣に思案した。
そしてしばらくしてまた右肩を掴まれたとき、恥ずかしながらウヒ、という声が出た。
くそ! 京介さんだ。また誰か逆回転にしやがったな。
こんどこそ悲しい事故を起こすつもりだったのに。
頭の中で毒づきながら、時計回りに次の隅へ向かう。そしてみかっちさん(たぶん)には遠慮がちに触った。
次の回転でも右からだった。その次も。その次も。
俺はいつまでたっても京介さんを触れる反時計回りにならないことにイライラしながら、はやくポケット来いポケット来いと念じていた。次ポケットが来たら当然反時計回りにスタートだ。
俺はそれだけを考えながら回り続けた。
何回転しただろうか、闇の中で気配だけが蠢く不思議なゲームが急に終わりを告げた。

776 名前: 四隅 2006/08/28(月) 20:28:18 ID:9j0TgqFm0

「キャー!」
という悲鳴に背筋が凍る。
みかっちさんの声だ。
ドタバタという音がして、懐中電灯の明かりがついた。
京介さんが天井に向けて懐中電灯を置くと、部屋は一気に明るくなった。
みかっちさんは部屋の隅にうずくまって頭を抱えている。
CoCoさんがどうしたの? と近寄っていくと、「だって、おかしいじゃない! どうして誰もいないトコが来
ないのよ!」
それは俺も思う。ポケットが来さえすれば京介さんを・・・・・・
まて。
なにかおかしい。
アルコールで回転の遅くなっている頭を叩く。
回転が止まらないのは変じゃない。5人目がいなくても、ポケットに入った人が勝手に再スタートするからだ。
だからぐるぐるといつまでも部屋を回り続けることに違和感はないが・・・・・
えーと、最初の1人目がスタートして次の人に触り、4人目がポケットに入る。これを繰り返してるだけだよな。えーと、
だから・・・・・・どうなるんだ?
こんがらがってきた。
「もう寝ようか」
というCoCoさんの一言でとりあえずこのゲームはお流れになった。
京介さんは俺に向かって「残念だったな」と言い放ち、人差し指を左右に振る。
みかっちさんもあっさりと復活して、「まあいいか」なんて言っている。
さすがオカルトフリークの集まり。
この程度のことは気にしないのか。むしろフリークだからこそ気にしろよ。
俺は気になってなかなか眠れなかった。

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