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おじゃま道草

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起きるなり、彼は、
「ああーーっ、疲れた。おれ、うなされてなかった?
揺すったでしょ。分ったんだけど、夢がさめないんだ。
これで4回目かな。同じ夢見たのは、、、
2階じゃ見たことなくって、いつもここで寝た時にだけ見るんだ。
おれ、何か寝言を言ってた?」
と、目をこすりながら、一気に話しました。
「うん、うん、、っていってたよ。」
船井さんが答えると、、、、
「そうか? おれ、うんう、、って、、、
自分では首を振ってたつもりなんだけどなぁ、、。
聞いてもらえる?」
そう言って、馬場君は夢について語り始めました。

馬場君が見た夢の要旨は次のとおりでした。
「気がつくと、座敷に座っている。
広い座敷で、30畳ほどはある。
電燈もなく、造りも古い。
時代劇のセットのようである。

しばらくすると、少女が現れる。
5・6才で、可愛らしい。
赤っぽい振り袖を着ている。
七五三参りに行く姿のよう。
髪もキチンと結ってある。
時代劇でなら、武家の娘という役がら。

少女が、
『おにいちゃん、あそんで。』
とせがむ。
遊んであげたいが、
<自分はここを動いてはならない。
動くと帰れなくなるかも知れない>
という不安感がある。
そこで、少女に、
『外で遊んできなさい』
と勧める。
しかし、聞き分けない。
『あそんで。あそんで。』
と、繰り返しせがむ。
しかたがないので、
<少しだけ、この場所で、、>
と思うと、それを察したのか、
少女はニコッとして、
持っていたお手玉を差し出す。
<さて、どうしようかな。>
そう考えながら、受け取ろうとする。

と、その時、座敷の奥の方から、
『遊んでいてはイケマセン』
という、母親らしき声が響く。
その途端、少女の笑顔は消える。
蒼白となり、自分(馬場君)の
陰に隠れようとする。
『呼んでるよ。
行かないと叱られるよ』
と言うと、少女は、おびえ始め、
今にも泣き出しそうである。

そしてついに、
母親が座敷のはずれから姿を現す。
和服を着込み、すらっとしている。
初めは、遠くではっきりしないが、
近付くにつれ、
綺麗な顔だちであることがわかる。
<優しそうな母親じゃないか>
そう思って、後を振り向くと、
少女は消えている。
   <あれ?>
不思議に思いながら、
母親の方を向く、、、、
先ほどの顔だちはかき消え、
なんと般若になっている。

恐怖に捕らわれ、
<にげなきゃ、、>
そう思った時、夢からさめる」

馬場君が話を終えた時、バンドのメンバーが2階から降りてきました。
ライブの打ち合せに皆で出かけるそうです。
腰をあげて、私たちも帰る支度をはじめると、、天井から、、いや、2階から、タッタッタ・・・と誰かが走り回る様な足音がしました。
全員聞こえたようで、一瞬、皆動きを止め、顔を見合せました。
「聞こえた? これで2度目だな?」
今、2階には誰もいないよなぁ。
馬場君が言うと、メンバー全員がうなずきました。茅野君がすかさず、
「大人だと、ドスッドスッという足音になるから、あれは、子供だな。
実際、2階で子供が走り回ると、あんな足音になるよ。」
とコメント。
しばらく、皆沈黙し、次の音を待ちましたが、もう、足音は聞こえませんでした。

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