厳選怖い話
鬼女

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595: 本当にあった怖い名無し:2011/06/21(火) 23:08:08.31 ID:SbZN7MgF0
女、と思われる黒い影。
光を浴びて姿が見えるはずなのに、影。
その頭には角みたいなものまで見える。

そこまで認識した瞬間、
Aは悲鳴を上げて逃げ出したそうだ。

ダメだダメだダメだダメだダメだダメだ
ダメだダメだダメだダメだダメだダメだ。

よく分からないがAの頭はそれしか思い浮かばなかったという。

もうAはよく分からないが坂を駆け下り、転びながら、
それでもとにかく逃げた。逃げた。△△寺に向かって逃げた。
どっこ坂の陸橋も越え、しばらく走っていたが、後ろに感じる嫌な空気。

なんだよ、鬼女ってのはどっこ坂にいるんじゃないのか?

もう随分走ってるぞ。△△寺についちまうじゃないか、
なんて考えながら、涙と鼻水を垂らしながらAは走った。
そのとき、△△寺に向かう道ではなく、右手の竹林に目が行った。

なぜか気がつくと道を外れて、その竹林にダイブしたA。
ごろごろ転がりながら、見えた後ろには、確かに鬼女の影があった。
これは、もうダメかと思った時、Aは竹藪の中で何か堅いものを手にしたらしい。

よく分からずにそれを握ると、近くの家から鶏の鳴き声が聞こえた。
それと同時に鬼女の影はだんだん薄くなっていったという。
ぜーぜーと言う呼吸が納まってきた時、
助かったのか?

そう思って影が消えた方を呆然と見つめていると、道から誰か覗いていたそうだ。
一瞬ビクッとしたが、よく見るとそれは昨日の老人だった。
「一体、そんなところで何をしてなさるのかね」

596: 本当にあった怖い名無し:2011/06/21(火) 23:09:45.49 ID:SbZN7MgF0
そう言って、老人が近づいてくると、Aはどっこ坂で見た事故?と
鬼女の影のことをまくし立てるように話した。

老人はAの無事を喜ぶと、Aの手を見ていった。
「その、握ってるものは何かね」
Aも、自分が何か握っている事に気がついて、握りしめたものを確認すると、
それは二つに折れた独鈷杵の半分だった。

「爺さんの話だと、鬼の縁で無くした独鈷杵の半分に引かれたのかもなぁ、
とは言っていたが、正直もう鬼に関わり合いたくない。だって怖いんだよ、マジで」

Aはそう言うと、泣きそうな顔でぶるぶると自分を抱きしめた。
お前の実家の方だぞ、この話。あそこら辺を通る時は気をつけろよ。

そんなことを言うAに、オカルト研でぶいぶい言っていたヤツが
変われば変わるモンだと感心しながら
「で、その影ってのは本当に鬼女の形をしていたのか?」
と聞くと、Aはまじめな顔で答えた。

「いや、ホントに鬼女だって。だってラムちゃんみたいなシルエットだったんだぞ」
「……いや、ラムちゃんはないだろ」

真顔でラムちゃんとか言うAの表情のほうが、俺にとっては正直、怖かった。
いや、マジで。

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