厳選怖い話
鬼女

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その後、どうなるか老人にも分からないが、
逆に因縁のあるものがいなくなれば鬼女もいなくなるのかもしれない。

592: 本当にあった怖い名無し:2011/06/21(火) 22:55:16.25 ID:SbZN7MgF0
「儂はそうやって、鬼女を鎮めて、時にはその影を見てきたから分かるんじゃが、
お前さんからは鬼の臭いみたいなものがする。いや、儂みたいな因縁みたいなものがある」
Aは老人の言葉にぎょっとした。
なぜなら、Aが仏門に入るきっかけが鬼、だったからだ。

「お前さん、○○寺まで行きなさるか。なら早く用事を済ませることだ。
暗くなってからはここを通ると縁に引かれるかもしれんからな」
老人お言葉にじわり、と汗ばむ季節なのにAの背筋には冷たいものを感じたそうだ。

Aは老人に挨拶すると、そそくさとそこを離れた。
老人の助言通り、早く用事を済ませて帰ろうと思ったらしい。

ところが世の中ままならないもので、Aの用事は夜までかかった。
そこで、無理をおして帰るほどAも怖いもの知らずではなく、寺で夜を明かしてから帰ることにした。
もっともAの方も暇な身ではないので、始発電車で帰ることにしたそうだ。

だが、厄介なことにAも修行中の身。
帰りも駅までは歩いていかねばならず、始発電車で帰るためには
暗いうちから寺を出なければならない。Aはさすがに嫌な気分になったが、それも仕方ない。

593: 本当にあった怖い名無し:2011/06/21(火) 23:01:21.29 ID:SbZN7MgF0
そこでAは寺の住職にどっこ坂の話を聞いてみた。
住職もはじめはピンと来なかったようだが、思い出したように言う。

「ああ、アレか。アレは下の方の△△寺が今でも供養しておるよ。
話によると鬼女を封じた石と独鈷杵の半分が今でもあるそうだ」

半分?
Aがその事を聞くと、住職は移転供養の際、
工事人がロープを掛けるところを間違って独鈷杵を折ってしまったそうだ
老朽化していたらしい。しかも輸送の途中で無くしてしまうと言うおまけ付き。

その話にAが青くなると、さすがに住職もバツが悪くなったのか、
Aに△△寺の場所を教え、何かあったらそこまで行けば
どっこ坂の鬼女も何もできないだろう、と言ったそうだ。
まあ逃げ場所を知ったAは、とりあえずそれで良しとし、
その晩は眠りにつき、予定通り暗いうちに寺を出発した。

Aが朝靄の深い道をどっこ坂に向かって歩いていると、どっこ坂の方がやけに明るい。
嫌な予感がしたが、考えてみれば現れるのは鬼女の影で、光ではないので
Aは臆病になっている自分を笑うとどっこ坂に向かって足を速めた。
近くによるとその光は車のヘッドライトで、どっこ坂の陸橋わきの土手に乗り上げていた。

事故か?
そう思って車の中を覗いてみると、車内には気を失った若い男女。
とりあえず息はあるしケガも見あたらない。
これは救急車より警察の方が、などと考えていたAの背筋に冷たいものが走る。
その嫌な感じのする方、ヘッドライトの先を見ると。

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