厳選怖い話
鬼女

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そこで、その因縁を断ち切るためにも、腕を失った自分の代わりに手を合わせて鬼女を鎮めること、
鬼女の庵があるので、そこで鬼女に食われたもの達の墓を六つつくり慰めることを指示して、
僧自身は腕を無くした自らの修行不足を恥じ、山へと帰っていった。
その後、六つの墓のあったあたりは六石塚、鬼女がいた坂はどっこ坂と呼ばれるようになった。

590: 本当にあった怖い名無し:2011/06/21(火) 22:45:35.35 ID:SbZN7MgF0
どっこ坂ではその後も村の人が鬼女を鎮めるために、旅の僧の指示通り、
村上げての念仏が行われていたが、それでもときどき鬼女の影が坂を彷徨くことがあったらしい。
そんな風習も今では失われて、地名も変わってその名前を覚えているのは年寄りだけだったらしい。
そんな失われた風習が今でも残っているにはそれなりの理由があった。

それは、この田舎にも鉄道がやってきた時に事件が起こった。
鉄道はどっこ坂のある小山を切り開いて通ることになり、
どっこ坂をまっぷたつにするように線路が通った。

地元の人間はどっこ坂の昔話を知っているので、
鉄道の工事には反対したらしいが、用地は県の所有だし、
どっこ坂の鬼女を封じた石は鉄道の方で移動して祀る事になったし、
結局は押し切られることになったらしい。

ところがここは、この路線でも予想外のずいぶんな難工事になってしまい、
工事中に何人か人死にも出たらしい。それは工事中の事故だけでなく、
自殺、変死もあったらしい。地元の人たちは言わんこっちゃない、と
鬼女の祟りがこっちに来ないように戦々恐々だったらしい。

それでも人の命の安かった時代、無理矢理にも鉄道は開通し、
どっこ坂はなくなり、その後人死にが出ることもなくなり、
人々はどっこ坂を忘れていった。

591: 本当にあった怖い名無し:2011/06/21(火) 22:48:06.41 ID:SbZN7MgF0
ところが、ここに一本の道路が通ったことでまた事件が起こり始める。
ちょうど線路によって分断されていた道が、整備されて陸橋が架けられた。
もとが旅人が通った道だけにルートとしては便利な道だったらしい。

ところが、道が開通してから不思議とそこで事故が多発する。
交通事故、自殺、変死、そんなことが半年に1,2度起こるようになった。
事故にあった人からは、女の影が~という人も続出した。

そんな話が耳にはいるようになってから、この老人は、
ここがかつてのどっこ坂であり、女の影、というのが鬼女ではないかと考え、
ここにお地蔵さんを建立したのだという。
そして、伝えられた儀式に従い念仏を月に一度は唱えているという。

「だが、これを知っているのももう儂1人だ。因縁のある村の末としてここまでやってきたが、
もう、村人はちりぢりになって他の地に移り住んだし、余所から来たものはこんな話は聞いてくれん」

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