子どものころの怖い話
イカ釣り

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「いいね、釣れてんだ。見せて。」
「凄い。大きいじゃん」
「うわ~~~凄い。」
「生きてる生きてる。」

何と言えばいいのだろう、妙に距離感が近い。
二人とも妙に距離感を詰めてくる、俺が苦手なタイプだ。
二人組はクーラーボックスに入ったイカをべたべた無遠慮に触って
わぁわぁ騒いでいた。

俺はお前ら誰だよ触ってんじゃねえよと子供ながらに内心イラついていた。

474 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2015/01/20(火) 21:48:25.72 ID:KzUJXmBM0.net
ひとしきり騒いだ後、
「……で誰が釣ったの?」
太った男が聞いてきた時だった。

「どうも!!!」
妙に元気の良い答えが、俺のでない口から聞こえてきた。
予想外なことに、声の主は親父だった。
ラジオを持った笑顔の親父が二人組の後ろにいた。

「いやぁ、このイカ。元気良いんです。良かったら貰って下さい」
親父はきらきらの笑顔で二人組にイカを渡しにかかった。
俺の親父ってこんなにハキハキしたタイプだったかな?
確かに営業職ではあったけど。

「まあまあ、おいしいですから、どうぞ。刺身もいいんですよね~」

「いや~悪いですよ~」「ねえ」と話す二人に、
親父は白いビニール袋にイカを入れて持たせた。

「いいんですよ。あ、今、ホラ、ちょうど港に車が入って来たでしょう。
あれ友人なんですけど。あいつからイカ貰えることになってますんで、
ホントどーぞどーぞ」
確かにちょうど港に入ってくるヘッドライトが見えた。

「そうですか」「じゃあ悪いけど」
二人組はイカの袋をぶら下げて、海に向かって煙草を吸いだした。

475 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2015/01/20(火) 21:50:46.08 ID:KzUJXmBM0.net
「ではこれで、いったん向こうに失礼しまっす!!!」
若造に愛想良く敬礼まで繰り出した親父は、釣り具をまとめ俺の手を引いて、
港に向かって歩きだした。

ああ俺のイカが………砂糖醤油が……おやじぃ~……
と異議を申し立てた表情をしてみたものの、親父はそっぽを向いていた。

フェンスを越え、港に戻ると、親父は入って来たその車に駆け寄り、
運転手のオッサンと何事か話すと、その車はぐるっと引き返して
港から出て行ってしまった。

イカもらうんじゃねーのかよ…おやじぃ~~……
とブータレ顔の俺は親父に促され、軽トラに乗りこむと、
俺たちも港から出てしまった。

476 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2015/01/20(火) 21:57:22.10 ID:KzUJXmBM0.net
おいっどういうつもりなんだぁーと聞こうとする俺に親父は謝りだした。

「すまん。本当にすまん。俺が甘かったんだ、俺が。
もう釣りはやめような。もっと昼間に遊ぼう。
ごめんなぁ、ごめんなぁ」

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