この怖い話は約 4 分で読めます。
その夜。
俊輔先生の突然の死と壮絶な死に方に、私は眠れぬ夜を過ごしていました。
目を閉じると、あの穴に落ちていた俊輔先生の顔が目に浮かんでしまうのです。
そんな時
コンコン!
私の部屋のドアが僅かにノックされました。
(誰・・・?)
コンコン!
(こんな夜中に誰だろう・・・?)
「先生。夕紅先生。」
聞き覚えのある声に、直ぐに、担当している生徒だと思いました。
私は直ぐにドアを開けると
「どうしたの?」
と、尋ねました。
すると、彼女はとても青ざめた顔で言いました。
「私の部屋の上から、変な音がするんです。」
だから、昼間の事もあるし怖くて眠れないのだ、と。
生徒の不安を取り除いてあげるのも講師の重要な仕事です。
私は彼女と一緒に、彼女の部屋がある上の階に向かいました。
すると、私達が上に向かう階段を登っている最中
ズルッ・・ズルッ・・・
まるで、何かを引きずる様な・・確かに、変な音がするのです。
ズルッ・・ズルッ・・・
その音は動いている様で、最初は彼女の部屋の近くから聞こえていましたが、徐々に遠ざかり、今は廊下の奥から聞こえている様でした。
89 :夕紅 ◆e/DkDKVoCg @\(^o^)/:2015/03/08(日) 21:38:45.97 ID:QZKoiujk0.net[4/7]
ズルッ・・ズルッ・・・
階段を登りきった私達は、廊下に出ました。
そして、廊下を見回してみました。
すると
「ひっ・・・!」
廊下の奥に、真っ青な顔の久美子先生の両足を持って引き摺る女性の姿があったのです。
長い黒髪に、真っ白な着物を着て、青ざめた肌に異様に手足が細い女性が、同じ位真っ青な顔で・・・
恐怖の余り悲鳴すら上げられない久美子先生をずるずると引き摺り、何処かに連れて行こうとしているのです。
久美子先生も床のカーペットに爪を立て、どうにか連れて行かれない様にしている様ですが、その爪は何枚か剥がれ、血が流れており、全く阻止する役目を果たしていませんでした。
「久美子先生!!!」
このまま連れて行かれたら、確実に久美子先生は殺されるーー!!
私達はそう思い、大声で叫びました。
勿論、今考えると私達が殺される可能性の方が高かった訳ですから、今考えるととかなり軽率な行動です。
しかし、あの時は、久美子先生を助けなければ!と必死だったのです。
すると、私達の叫び声に、久美子先生の脚を持っていた女性が顔を上げました。
長い黒髪で覆い隠されていたその顔がゆっくりと、しかし確実に私達を捉えたのです。
「きゃあああああ!!!!」
「っ・・・・!!・」
その女性の顔には、目や鼻がありませんでした。
いいえ、正式には、目や鼻や口はある事にはあったのですが・・・その全てから大きな蛇が無数に這い出して来ていたのです。
余りにショッキングなその姿に生徒さんは気を失ってしまいました。
私も気を失ってしまいたかったのですが、それでは久美子先生を助ける事が出来ません。
それに何より、あまりに異様なその姿にまるで金縛りになった様に足がすくみ、情けない事に動く事すら出来なかったのです。
その蛇を生やした女性は私達に気付いて尚、久美子先生を引き摺る事を止めようとはしませんでした。
「く、久美子先生を離せ!!」
私はそう叫びました。
すると女性は、もう一度私の方を振り向くと、久美子先生を引き摺ったまま、ゆっくりと此方に向かって来たのです。
90 :夕紅 ◆e/DkDKVoCg @\(^o^)/:2015/03/08(日) 21:41:55.22 ID:QZKoiujk0.net[5/7]
「ひぃっ?!来るな!!」
私はホテルの廊下に飾られていたお花や置物を手当たり次第に投げつけました。
しかし、それらは女性層に当たる事なくすり抜けてしまい、女性は遂に私の目の前に立ち、久美子先生を離すと、その両手を私に伸ばして来ました。
(殺される!!!)
女性の青白く病的に細い手が私の首に絡み付き、恐ろしい程強い力で締め上げて来ました。
(く、苦しい・・・!)
首の骨が折られてしまうのではないかーーそんな、万力の様な強い締め上げを首に受けながら、何時しか私は意識を失っていました。