洒落怖
A日新聞奨学生

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「またかよ しょうがねえな」
オレは今日何軒目かの「もう入らない新聞受け」にイラつきながら、古いのを引き抜いて新しいのを入れようとした。その時、引っかかった古新聞と一緒にドアがほんの少しだけ開き、カミソリを引いたような玄関灯の光がすうっと伸びた。
「あれ?開いたよ・・」
いつものオレなら、そこで悲鳴が聞こえようが絶対ドアを開けることなどしなかったはずだ。もちろん悲鳴なんかない。
それどころか物音ひとつせず静まりかえっている。

190 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:04/06/08 14:46 ID:FKKbjLwO
「はいはい、逃げちゃったね またこっちが怒られるわけね」
オレは、ドアを開けて、積みあがっていた新聞を玄関に蹴り戻した。
どうかしてたんだと思う。いや後のことを考えると、この時すでに「それ」に呼ばれていたのかもしれない。

501の主は、壁と自転車の間でうずくまるように座っていた。
凝視しないと、それが人間であったことなど分からないくらい、変色し腐乱していた。

憶えているのは猛烈な臭いと、夥しい蝿の群れだ。不思議と死体そのものの記憶が無い。記憶にあるのは周りのものばかりだ。
警察の現場検証が終わり、小さな新聞の記事で501の主が元教員で孤独な
老人であったこと、子供夫婦と不仲で一人暮らししていたこと、死後2週間経っていたことなどを知った。

都会で孤独に沈む老人の境遇に、19歳のオレは何の感傷も湧かなかった。
この街の瘴気に侵され始めていたのかもしれないが、オレは集金のことで怒られなくて済んだ事の方が大事だった。

そして、「それ」はやってきた。

192 名前:どこいったの?実話さん? 投稿日:04/06/08 14:48 ID:FKKbjLwO
新聞配達をする者にとって、雨は大敵だ。もう梅雨の気配が漂うこの時期、借上げアパートの屋根に落ちる雨音はそれだけで憂鬱になる。新聞のビニール袋詰めを計算すると1時間早く出なければならないからだ。

501の件の翌日深夜、オレはザーっという雨音で目が醒めた。
「雨かよ クソッ」
オレは押入れからカッパを取りだし、アパート内の1階にある下駄箱から長靴を取ってきてもう一度2階に上った。1階の玄関は鍵が掛かっていて、配達員は2階のドアから出入りするよう言われていたからだ。オレの部屋は2階の東の端。
出入口はすぐ隣だ。

オレはドアを開け、外に出た。
星が輝いていた。

「晴れてんじゃねえかよ」
寝ぼけてたかな?とカッパや長靴をしまい、折込作業に出かけた。何事もない普通の1日だった。

そしてその夜、オレは雨音で目が醒めた。

193 名前:どこいったの?実話さん? 投稿日:04/06/08 14:50 ID:FKKbjLwO
「あれ?雨か・・・」
オレはまた押入れからカッパを取りだし、1階の下駄箱から長靴を取ってきて外に出た。
星もない暗い夜だったが、雨は降っていなかった。
「ふざけんじゃねえよ 何だよこれ?」
誰に文句を言う訳にもいかず、カッパや長靴をしまい、また折込作業に出かけた。

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