洒落怖
工事現場

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一人の男性が、ピクリとも動かずに横たわっているソレに泣いてすがりついている。
いつからそこにいたのか、制服の警官がその男性をソレから引き離そうとしている。
先ほどまでは足元しか見えなかったソレの頭部が徐々に見えてくる。
同時に、別の制服警官がありがちなブルーのシートをソレにかぶせ始めた。
私は、頭のどこかで

『見るな、振り返って自宅に入れ、見るな』

という警告の声を聞きながらも、ソレから目が離せなかった。
泣き叫ぶ男性が引き剥がされ、ついに私はソレの顔だった部分を見てしまった。
はじけた石榴のようになったソレの頭部にはもはや顔は存在せず、赤黒く変色した物体にしか目に映らなかった。
そして、ブルーのシートがソレを覆い尽くす前の本の一瞬、信じられない事が起きたのである。
ソレは既に生きてはいない。
動くわけがない。
にもかかわらず、ゆっくりとソレの頭部がこちらを見るように回転し始め、そして、カッと目が見開かれたのである。
私は恐ろしくなり、振り返って自宅に逃げ込もうとしたら、直接頭に声が飛び込んできた

『お・い・・ぼ・う・ず・・・』

私はパニックになり、自宅の自分の部屋に駆け込むと、友人二人も青い顔をして部屋に入ってきた。
友人達も同じ光景を見たのかと思っていたらそうではなく、どうやら先ほどのパワーショベルの悪戯のことだと言う。
2人に聞くと、誰も居ない操縦席に入り、エンジンもかかっていないからと、適当にレバーをがくがく動かしていたら、そのうちの1本が折れてしまったらしい。
で、そこにあったガムテープでぐるぐる巻きにして固定をしたとの事。
彼らは、一旦帰ったものの、やはり気になって戻ってきたら事故になっており、自分達のせいだと青い顔をしているのである。
とりあえずこの件は3人の秘密にし、その日は別れた。

翌日の母の話によると、亡くなったのは、やはりいつも声をかけてくれる男性で、工務店の社長さんとのこと。
で、よりにもよって自分の息子さんが操縦するパワーショベルの先端が頭部に直撃して即死だったと・・・
警察の調べで、操縦中にレバーが折れ、ショベル部分の操作が不能となったことが原因らしい。
亡くなった男性以外に2人の悪戯を知るものは無い。
あの男性には悪いが、やはりこの件は3人だけの秘密にするしかなかった。
それにしても即死だったら動くはずは無い。
しかし実際に顔がこちらを向き、そして声が・・・

『お・い・・ぼ・う・ず・・・』

あの事故からちょうど1週間が過ぎ、いよいよ夏休みも終わろうとしていた。
事故の最期に見たこと、聞いたことは、初めて目にする生々しい光景による一種の幻覚、もしくは白日夢か何かだろうと無理やり自分を納得させていた。

その夜、ラジオを聞きつつたまった宿題をこなしていた。
時間は深夜2時。
さすがに眠気が強くなってきたので、そろそろ寝ようかと思ったその時、突然ラジオからノイズ音が聞こえてきた。
さっきまでちゃんとチューニングできたのにAM・FMのどの局も入らなくなってしまった。

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  • 匿名 より:

    因果応報

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