洒落怖
無念

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葬式は行われなかった。

723 3/5 sage New! 2006/10/30(月) 12:03:00 ID:jJphJYCV0
警察の一通りの捜査が住んでから数日後、一度どうやら例の親戚が家に集まっていたようだが、あまり物を持ち帰っている様子ではなかった。(貴金属など小さいものは知らないが)
さすがに自殺となると気持ち悪かったのだろうか。

しかしその次の晩から近隣住民は悩まされることになる。
どういったわけか、二階の窓が一つ開けっ放しのままで、電気もつけっぱなしである。
そして部屋の中に和服がかけてあるのが見える。
夜になるとそれがわずかな風でもゆらゆらと揺れて、まるで人の後姿のように見えるのである。

珍走団のDQN高校生が肝試しで侵入していたずらしたんだろうとは思ったが、それにしても不気味だった。
親戚とやらに連絡してとりあえず一度は窓を閉め、着物を下ろし、電気を消してもらったのだが、数日後、また電気がついていて、今度はガラス戸の向こうにゆらゆらと何かがゆれている。
もう、いたずらだろうがなんだろうが、あれは恐ろしかった。

724 4/5 sage New! 2006/10/30(月) 12:04:24 ID:jJphJYCV0
三ヶ月はそのまま放置されていたと思う。
そしてなんの前触れもなく解体工事が始まった。
これがまたとんでもないDQN業者で、
『いついつからこういう工事をするのでよろしくお願いします』などの挨拶も全くなし。
周りに幕を張ったり音に気を遣うなどの配慮もなし。

そして工事も解体というより破壊だった。
庭の灯篭をショベルで壊すことから始まり、
ガラスは全て金属パイプでかち割るし、家具も鏡も叩き割っていた。
庭には高そうな食器や陶器が並べられていたが、
昼休みにはそれを壊れた灯篭に投げつけて遊んでいた。
あまりの騒音に隣の家の住民が苦情を言ったのだが、
鉄パイプを持った、がたいのいいDQNがガムを噛みながらやってきたら、誰でも対応は一つしかないと思う(笑)
『あと数日なんで~~がまんしてくれますかねぇ~~すいませんねぇ~~』といわれたら、はいとしか言えないだろう。
庭でたまに何か燃やしていたが、もしかすると和服かもしれない。

トラックに積み込んでいた家具の残骸なんかを見ても、本当に上等なものばかりだった。
この家だって財産だって、別の家の遺産をいわば横取りして築いたもの。
だから自業自得かもしれない。
しかし、本当に上質のものだけを選び抜いて築き上げ、最後まで守りたかった家をこんなDQNに荒らされ、破壊されつくすのは辛いだろうな、とつい思ってしまった。

最後は巨大な重機で家を横からなぎ倒し、上から押しつぶしてから家の基礎部分まで地面を削り取り、工事は終了した。
何もかもが瓦礫となった後にもっていかれ、本当に他より地面が20cmくらい低くなっていた。
どういったわけか柵だけは残されたが、事情を知っていれば何もなくても誰も立ち入ろうとしないだろう。

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