洒落怖
逆吸血鬼と存在しない町

この怖い話は約 3 分で読めます。

 恐怖がないと知れば、好奇心は際限なく膨れ上がる。
未知のジャングルを探検する冒険家のごとく、アスファルトの坂道を駆け上がる。
いつの間にか、あたりは住宅地になり、なのに人の気配はしなかったが、まったく気にならなかった。
この道はニュータウンに繋がるための道だったのだ。
そしてこれらも最近建てられた家なのだ。
だから人の気配がないのは当たり前だと。
だがこれほどの規模となると山を丸まる一つ削らなければならないほど。
何時そんな工事が行われたのか?
そもそも、道路を作るのと順序が逆になっている。
でも俺はヘリコプターで空輸という勝手な理屈で納得していた。
子供は効率など考えない。
そしてさらに住宅地の向こうへと向かう。
住宅地を横断したときにようやく気づく。
これだけ歩いたら、山向こうの学校についてしまっているのでは?
そして、学校の近くにこんな住宅地あったっけ?
何故なら、目の前には自分が通っている学校があったから。

 「木曜の怪談」という番組で、宇宙人が作った町という話があった。
当時、親に夜寝れなくなるからと注意されながらも、好奇心と恐怖心の狭間で観ていた一番のお気に入りだった番組である。
その話では、主人公の少年たちは町から人が消えたことに気づき、その原因が宇宙人による誘拐であると気づくが、
実は主人公たちのいる町自体が、宇宙人によって作られたコピーであり、主人公たちのほうが実は誘拐されていたという話。
その後、主人公たちは地球のUFOを追跡するライター達の協力で無事脱出する。
俺はそこにいるのではないか?
そう思った瞬間、今まで理屈という檻に閉じ込められていた恐怖と疑問が復活した。
そう、たった一日で町なんてできるわけがない!

490 逆吸血鬼と存在しない町 sage 2008/08/31(日) 01:58:05 ID:YaF8J6x30
ならこれは何だ?
後ろを振り返る。
相変わらず人の気配のない住宅地
これは町に偽装したUFOだ!
そう結論した。
そして俺のおかれている立場に恐怖した。
これじゃあ、わなに飛び込んだも同然ではないか?
目の前にはよく親しんだ学校がある。
そこには遠目ながら遊んでいる子供たちがいた。
宇宙人に気づかれる前に急いで逃げないと・・・・・・。
そうして俺は走った。
必死に目の前の道を走った。

 そして、目の前の車が走っている普通の道路を渡り、学校の校舎の中に飛び込んだところで、ようやく一息ついた。
グラウンドでは、野球部の少年たちが練習をしていた。
それをみて、安心する。
そして横目でそっと先ほどまでいた住宅地の様子を伺う。
それは山の上に覆いかぶさるように存在した。
だが自分の記憶をいくら探っても、あの山に住宅地が存在した記憶がない。
何より、ほかの人がまるでその住宅地を存在してないかのように扱っているのが不気味だった。
事実、どの車も住宅地に入ろうとしない。
そして最も異常なのは、信号。
それは例の住宅地に続く交差点の信号。
信号は赤になっているのに、車が止まらないという事実。
きっと運転手には信号どころか交差点の存在すら分からないに違いない。
あれには関らない方がいい。
それが俺の出した結論だった。
だから、学校を出て普通の通学路を通って帰ろうと思った。
そして今日はゼルダをやって時間をつぶそう。
「おい!」

この怖い話にコメントする

逆吸血鬼と存在しない町