洒落怖
トイレ

この怖い話は約 3 分で読めます。

179 1/2 sage 2009/07/29(水) 21:59:12 ID:A5DDdXZ80
投下。

深夜の雑居ビルの警備のアルバイトにて。

新入りであった私は、まず同僚と2人で回ることになった。決められたルートを懐中電灯片手に歩くだけという極めて楽な仕事であった。
特に何事もなく、こりゃ楽なバイトだなと思い始めた頃、3階の奥にあるトイレの前に差し掛かった。
すると同僚が「トイレに行きたい」と言い始めた。新入りである私は断る理由もなかったし、
私も軽い尿意を催していたため、一緒にトイレへと入った。何の変哲もない、小便器が4つ、
その向かいに大便用の個室が2つあるという、ごくごく普通の綺麗なトイレであった。
同僚は大きい方らしく真っ直ぐ大便の個室へ向かって行った。
こんな時間に誰もいるはずないのに、癖なのか、わざわざノックをしている同僚の様子が可笑しかった。
当然ながらドアの向こうから返事はなく、そのまま同僚はノブに手をかけた。
開かない。

中に誰かいるのか、それとも扉の故障なのか何度かノブを回していたが、結果は同じようであった。

諦めたのか、同僚は隣のトイレへ入っていった。

用を済ませた私は、開かずのトイレが気になり始め、件のトイレの前へ。
ノブを見ると、中から鍵が閉められているのを意味する赤い塗装を覗かせていた。誰か入っているのだろうか。
「用を足してる間に、心臓発作か何かで意識を失っているのかもしれない」
「酔っ払いが酔い潰れて寝てしまったのか」
後者であることを祈り、ドアに耳を当ててみた。しかし。鼾は聞こえてこず、隣の個室から気分の悪い音がする以外は無音であった。
前者であったら大変だと思い、私はいろいろ考えてみた。
その結果、私がとった行動は「ドアの上から中を覗き見る」ということであった。
掃除道具入れからバケツを持ち出し、足場を作り、ノブに足をかけ、体を思い切り上にあげ、ドアの上部に手をかける。そして中を覗いた。

そこにあったのは、サラリーマンらしき中年男性の死体であった。よく見ると小蝿が飛んでおり、首にネクタイをくくっていた。

180 2/2 sage 2009/07/29(水) 22:00:42 ID:A5DDdXZ80
なるほど、自殺したようである。が、不思議と死体特有の異臭はしなかった。
普通こういう場合は、警察を呼ぶのが最善であると思うのだが、その時の私は何を思ったか、他の同僚にも知らさなければと思い、
うんこをしている同僚を残し、警備員の詰め所へと向かった。特に焦らず、極めて冷静にである。
しかし、よくよく考えてみれば、このビルには私と今うんこをしている同僚しかいないのである。もちろん詰め所には誰もいなかった。

とりあえず戻ろうと先ほどの3階の奥へ向かった。

しかし、そんなところにトイレなどなかった。

どんなに探しても、トイレはない。場所を間違えたか、階を間違えたか全てのトイレを探してみたがトイレはない。
そこで記憶が終わっている。

この怖い話にコメントする

トイレ