洒落怖
けもの

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目が覚めたのは、何時ごろだったろうか。
まだ、あたりは暗かった。なぜ起きたんだろうとぼんやり考えていると、外でがさがさと物音が聞こえた。
それとともに、あのつぶやきも聞こえる。
「……………もの。……………もの。………………もの。………………」
「……………もの。……………もの。………………もの。………………」
心臓が一気に縮み上がったような感じだった。こめかみの欠陥が脈打ってるのがはっきりわかった。
そのうち、窓ガラスが叩かれるようになった。
こんこん、こんこんという音とともに、「…………さい。…………さい。」という声が聞こえる。
ふと弟のほうを見るといつの間にか起きていて、
真っ青な顔で「にいちゃん、あれなんだろ。怖いよ」と震えている。
俺は弟のそばにより、そして窓の声へと集中した。

「あけてください。……あけてください。」

その声は、そういっていた。
声色は、やはり人間の赤ん坊のものだった。しかし、窓の外の影はとても幼児、いや人間のものではなかった。

しかし、その声をずっと聞いているうちに、こいつも必死なんだなという妙な気分になってきた。
と、弟が
「ダメだよ、兄ちゃん!」
ハッ、と我に返った。俺はいつの間にか、窓に近寄って空けようとしていたのだ。

一気に恐怖が戻ってきて、そのまま弟のところまで這って戻り、今度はひっしと抱き合った。
そのまま、まんじりともせず朝を迎えた。

278 俺の体験した話6 sage 2009/07/07(火) 00:54:23 ID:MDJEHio50
とんとん、とふすまを叩く音がして、「じいちゃんだぞ、なんともないか、無事か」と声をかけてきた。
俺はすっかり疑心暗鬼に陥っていたけど、
朝日も差し込んできたし、こちらからあけなければ大丈夫だろうと思い「無事だよ」とだけ答えた。

するとふすまが開き、じいちゃん、ばあちゃん、昨日のおばちゃんと、両親が入ってきた。
おばちゃんは「よう頑張ったたい、とにかく無事でよかった」といってくれた。
お札は白から鉄錆みたいな色になっていて、なぜかもとの半分ほどの大きさしかなかった。

それから俺たち兄弟は実家に戻り、二度とじいちゃん家を訪れることはなかった。
そのじいちゃんは母方のものなので母親はその霊能力者とも親交があるらしく、
何度か実家のほうに来てもらった。

月日は流れ、俺が高1のとき、じいちゃんが死んだとの知らせが入った。
死因は、なぜか話してもらえなかった。
母親にあの「けもの」との関連を問いただしても、だんまりを決め込んで決して答えようとはしなかった。

ばあちゃんは、緩やかに痴呆が進んでいるらしい、とだけ聞いた。
結局、あの「けもの」との関連は判らずじまいだった。
今はただ、あの日の軽率な行動を悔いてばかりいる。
ばあちゃんの世話をするどころか、その死に目にも会えないのが、無念でならない。

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