洒落怖
エディ

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「・・・結構いるね」
エディが真顔でつぶやく。
(ほら、はじまったよ)他の3人は同じようなことを思っていた。
夜間も開放されているゲートを抜け、車はゆっくりと墓石の並ぶロータリーを進んだ。
「おい、見えるか?悪意のある霊じゃないけどあそこの木の陰とか・・・」
後部座席で『霊感』を発揮するエディ。
俺は助手席で笑いを堪えるのに必死だった。
タケはロータリーを3周し、斎場正面に車を停めた。
「いいっすか?いきますよ」
タケはクラクションを鳴らし車のライトを切った。真っ暗な車内に沈黙が流れる。
サダがごくりと唾を飲み込んだ音がした。
そのとき・・・。

298 鼻毛山抜之介 sage New! 2009/05/15(金) 01:40:10 ID:pk0kfXsq0
「ヤバい!タケ!車出せ!!」
突然エディがわめきだした。
「え?どうしたんですか?!」
「いいから早く出せ!来てる!!」

周囲を見回したが俺には何も見えなかった。
タケは言われるままアクセルをふかし、車を急発進させる。
「いるか?」
俺はタケに訊いたが彼も全く見えてはいないようだった。
後部座席を振り返ると、わめきちらすエディの横でサダが硬直していた。

「早くしろ!来てるってば!いっぱいいるんだよ!!」
エディは後ろを振り返りながらパニックになっていた。
そして数珠を握り締めながら九字を切ったり、お経のようなものを唱えたりしていた。
(なにこの出鱈目・・・)俺は素人ながらも冷めた目でエディの様子を見ていたが、
それでも狂ったように何かを唱えるその姿には怖くなってきた。
隣のサダもエディの姿に恐怖を感じていたのか、ドアに体を寄せ、必死で距離を置こうとしているようだった。
ハンドルを握るタケも必死だった。
咥えたタバコに火を点けることすら忘れ、タイヤを鳴らしながら車を走らせた。

ようやく町の灯かりが見え始め、タケはスピードを落としコンビニの駐車場に車を入れた。
「マジヤバかったなぁ」
大きく肩で息をしながらエディが言った。
「クラクション鳴らしてライト切った途端、いろんなとこからワラワラ出てきたんだぜ」
「俺、ぜんぜん見えてませんでしたけど、かなりいたんですか?」
俺はエディに尋ねてみた。
「馬鹿!オマエ、あんだけいたのに何も見えてなかったのかよ!
2~30人はいたけどよ、あの中でも特に鎧の落ち武者みたいなのが・・・」
ひとしきり、どれだけヤバかったのかを語ると、エディは得意気に言った。
「何とか俺が○○経唱えて式も打ったからよ、無事に帰ってくることができたわけだな」
俺とタケとサダは顔を見合わせ、とりあえず「お陰様でした」と言うしかなかった。

299 鼻毛山抜之介 sage New! 2009/05/15(金) 01:45:12 ID:pk0kfXsq0
俺たちはコンビニで飲み物を買い一息ついた後、そこから一番近いエディをアパートへ送っていった。
エディは意気揚々と部屋に引き上げ、ベランダから俺たち3人を見送った。
タケはエディを送り届けた後、さっきまでのことを語りたかったらしく、俺の部屋で飲もうということになった。
3人は再びコンビニに寄って酒とツマミを買い、俺の部屋で安堵のため息と一緒にビールを開けた。
「で、本当にいたわけ?」タケが尋ねる。
「いや、何も。でもエディのパニックがマジで怖かったよ。狂ったのかと思った」
俺は笑いながら答えた。

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