洒落怖
窓から見えたもの

この怖い話は約 3 分で読めます。

847 1/2 sage 2009/04/22(水) 12:59:30 ID:/sjKbVVx0
全然怖くないのだけれど、後々思い出してみてアレ?と思った話を一つ。

今も昔も、私に霊感はない。子供の頃住んでいたアパートは「出る」と有名だったらしく、クラスメイトのアホ男子に「お前あのユーレイマンションに住んでんだろ?こえー」と度々からかわれていた。
実際アパートの住民にも「見た」と言う人は多く、上の階に住んでいた母の友人はまさに見える人、母と話している最中に突然「女がこっち見てる」などと言いながらガタガタ震えだしたりしていたらしい。
彼女は「見た」時手のひらに金粉が浮くらしく、つい先ほどまでまっさらだった筈のその手のひらがいつの間にやらうっすら金粉に覆われている様を母は何度も目撃しているのだとか。姉も、よく「非常階段に女の霊がいる」と怯え、決してその階段を使おうとはしなかった。
そんな環境で育ちながらもなお何も見えなかった私はというと、そんな話を聞いた後も暢気に非常階段をお気に入りの遊び場にしていた。何となく、私はこのまま一生心霊体験などせずに死ぬのだろうと、子供ながらに漠然と予想していた。

さて、そんな折。小学三年生の頃の事だ。
給食の時間、誰よりも早く給食のお盆を受け取った私は、自分の席でぼんやりと窓の外を眺めていた。
他の小学校がどうだかは知らないが、私の学校では、給食時は近い席の生徒と6人の「班」を作らなくてはならない。縦2列、前後3列の生徒同士、机の向きを変えてぴったり向かい合うように座るのだ。
その当時私の席は窓際から数えて2列目だった為、班を作る際は窓際の席の生徒と向かい合えるよう机の向きを変えていた。つまり、窓と向き合っていた。
私の班のほかの生徒たちはまだ配膳の列に並んでいる最中で、お陰で私の視界を遮る物は何もない。おなか減ったなーなどと考えつつ見るともなしに窓を眺めていたその私の視界に、その時それは飛び込んできた。

848 2/2 sage 2009/04/22(水) 13:06:19 ID:/sjKbVVx0
白い、子供の手。

それは窓ガラスの向こうに唐突に現れた。
私に見えるのは手からひじの辺りまでで、そこから下は壁に遮られて見えない。その手は何か白いボールのようなものを握っていて、おもむろにそれを上方へと放り投げた。
ボールはまっすぐ飛び上がり、一度窓と壁(天井、と言った方が分かりやすいか)の境目に消えると、やがて重力に従い落ちてくる。白い手はそれを綺麗にキャッチし、ひゅっと素早く下へ引っ込んだ。私はすぐに思った。
「誰かが校庭に出てボール遊びしてる。いけないんだ」と。
校則で、給食が終わり昼休み開始のチャイムが鳴るまでは決して校庭に出てはならないと定められている事は全校生徒が知っている事。それを破った生徒は教師から厳しい叱責を受ける。当時クラスでも仕切り屋の部類に入っていた私は、
すぐさまその生徒を注意しようと思い、席を立ち窓へと駆け寄った。
結局、ボールで遊んでいたと思われる生徒の姿は校庭になかった。素早く校舎の中に逃げ込んだのだろうと、その時は思った。

この怖い話にコメントする

窓から見えたもの