洒落怖
肘から先

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754 本当にあった怖い名無し sage 2009/06/28(日) 19:26:21 ID:FEC44+3A0
とある線の通勤時間帯の上り電車。この線は都心でも通勤時間帯の乗車率がずば抜けて高く
社内はまさにすし詰め状態である。

その日は運が悪いことに下り線でトラブルがあり、ただでさえ混みあう電車待ちのホームは
いつにもまして人であふれかえっていた。そのうちに自分が乗る電車がホームに入ってきて、
人混みに押されるように電車内に押し込まれていった。そのとき下り線で通過電車が通過する
際に何か悲鳴が上がったような気がしたが上り電車はそのまま走り出した。

(くっそー、今日はやけに混んでやがる。でも前が女性だからラッキー)

電車の揺れに抗うことなく、右へ左へ揺れながらこんな事を考えていると、ふと前の女性がこちらを
チラチラ振り返っている。

(?なに?)

不思議に思っていると、その女性は困ったような怒ったような顔をしながら、相変わらずこちらを
振り返りながら、そのうち小声で『止めて下さい』と言い出すではないか!

(え、え、え!?なに!?オレまさか痴漢に間違われている!!??)

あせって両手を引き出したいのだが、完全に体制は固まってしまっており、上手く手が引き出せない。
そのうち女性の異変に気付き始め、周りの視線も女性と私に集まり始める。

(まずいまずいまずいまずい!!!!冤罪だ冤罪だ冤罪だ冤罪だ!!!!)

そのとき女性が意を決したように私のほうを睨みつけこう叫んだ!!

『この人痴漢ですっ!』

女性が叫びながら手を上に上げたとき、ちょうど電車が揺れ、私の両手も自由になり、彼女の叫びと
ほぼ同時に私は両手を上に上げた。

755 本当にあった怖い名無し 2009/06/28(日) 19:27:45 ID:FEC44+3A0

集中する電車内の好奇な視線。女性の睨みつける視線の先は相変わらず私であったが
その彼女の視線が不意に揺れた。

彼女の目は私が上に上げた両手に行き、そしてその後に自分が揚げている右手に注がれた。
彼女は自分の体に這い回った痴漢の手を私の手だと思い、掴んで持ち上げたのだが、それは
私の手ではない。

彼女が掴んだ手。その手の主を確認しようと視線を移す。

しかし、その腕の持ち主は・・・

『きゃーっ!!!』

電車内に響き渡る悲鳴の中、電車は次の駅に到着し、車内の人が押し出されるようにホームに
吐き出される。いつもの光景。

だが、ひとつだけいつもと違っていたのは、ホームに呆然と立ちすくむ女性がいる事。

その女性が先ほどまで私を痴漢だと勘違いしていた事。

そして、その女性の右手は、しっかりと一人の男性の腕をにぎり締めており、その腕の肘から先は
そこには存在していなかった。

756 本当にあった怖い名無し sage 2009/06/28(日) 19:29:07 ID:FEC44+3A0

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