洒落怖
シャム双生児

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そうして、月日が流れました。

25歳になったピムは、きれいな大人に成長していました。
ただ、ひとつ、体に傷があります。 そうです。 腹部に切断手術の跡が、縦50cmほど残っていたのです。 プロイは、8年前に死亡していました。

ピムには、ジェイというハンサムな恋人がいました。
ジェイは、ピムとプロイが17歳の時に、入院していた病院で知り合ったので、ピムの過去も全て知っており、それを受け入れて、恋人として付き合っています。
新鋭の建築家で、今は、二人で、ロスに住んで、多くの友人と、楽しく生活をしていました。 そこへ電話があったのです。 「バンコクの母が危篤です。」

二人は、急いでバンコクへ戻ることにしました。
まず、急いで病院へ駆けつけると、眠っていた母が、急に驚き、ピムを見て、がたがた震え始めました。
まるでピムの後ろに何か、恐ろしいものがいるように・・・

病院を後にした二人が、昔住んでいた家に戻ると、そこは、10年前から、時間が止まっていました。 クローゼットには、ピムとプロイのお揃いの洋服、靴がならんでおり、二人が一緒に座れるように、特別に作った鏡台もそのままでした。
その鏡台の引き出しには、プロイが使っていた眼鏡も残っていました。

その夜からです。 不思議なことが起こり始めたのは。
明らかに、ピムは横に誰かがいるような気配を感じます。 
寝ていると、横で、寝息が聞こえる、ピムを見て、犬がけたたましく吠える、また、昔からいるメイドさんも、ピムの顔を見るなり、引きつったような顔になり、消えてしまうなどの、不思議なことが起こります。
ピムは、思い出していました。
あの約束を、「ずっと一緒だよ、死ぬまで一緒だよって。」

ジェイは心配して、ピムを精神科の医者につれてゆきました。 精神科の医者は、あなたが、見えるように錯覚しているのは、あなたの頭の中にあるイメージで、原因は、あなた自身の心の中にあるものと説明しました。
しかし、ジェイも見たのです。ピムが座るソファの横がへこんでいること、ピムがソファから立ち上がると、すぐ横のへこみも、元に戻ることを。

ジェイは、二人が結合双生児の頃に、病院で、ピムと出会っています。
絵が好きで、よく二人の絵を描いていました。 モデルは、ピムが右側、プロイが左側でしたが、全ての絵は、ピムだけを描いていました。
プロイは無視していたのです。
しかし、彼は、今見たソファのへこみは、確かに、ピムの右側にあったのでした。

ピムは、相変わらず、プロイの幻覚におびえていました。
寝ていると、横には、あきらかにプロイの雰囲気が感じられます。
それは、日に日に、強くなってゆきます。 
ピムは、半狂乱になり、クローゼットにあったお揃いの服・靴、写真など、
すべての結合双生児時代を思い出させるものを持ち出して、ジェイに頼みました。
「全部、焼き捨ててしまって、もうたくさんよ。」

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