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僕はね
昔から幽霊とか目に見えない存在なんて一切信じない人間だったんだ
でも、ある人が僕にこう言った
「君が今見ている色、それは他人にも同じ色に見えているのかな?」
「小さい時からこの赤色を黒だと刷り込まれれば赤色を黒だと思い込む」
彼は市販の赤色の百円ライターでタバコに火を付けて話しを続ける
「君はもう見えている筈だよ、でも先入観がそれを見る事を否定している」
「まぁ当然だね、脳はそれを見ないようにフィルターをかける事で自身を安定させている」
「社会や村八分から身を守るための当然の脳の進化だと言えるだろうしね」
「では先入観そのものが脳のフィルター、と考えてもいいのだろうか?」
「そうだね、見える人なんてものは脳がただそのリミッターを解除した人間に他ならない」
「つまりこれは異常者、とも言える事なんだよ。脳がその役割を放棄した結果な訳なんだから」
364 無題2 sage 2010/07/07(水) 12:03:41 ID:9nFYZN3J0
彼は自分達のような見える存在を異常者と言った
付け加えて隔離されるべきとも言っていた
「君達のような見える人間には何が見えているんだろうか?参考までに聞かせて頂きたい」
「色々さ、それこそ人によって様々な形や匂いで現れる」
「価値観や偏見だって人それぞれだろう?それによって見えてくる物は大いに変わる」
「僕が腕に見える物を他所の人には木の枝に見える場合もあるだろ?」
「つまりは個人の主観でしかない訳だ、伝えるにも同じ物を見たという前提がないと信じてすらもらえない」
たしかに僕は幽霊など一切信じてはいない
この目で直接見ない限り死ぬまで否定し続けるはず
仕事上、オカルト関係の人間に関わる事は多いがそのどれもが胡散臭く見えて仕方がないのだ
TVで偉そうに高説を語る霊能力者、除霊に高額寄付金を取る霊媒師、そのどれもが
心理学を応用した喋り口調、間の取り方など研究されつくされた話し方だったからだ
367 無題3 2010/07/07(水) 12:31:55 ID:9nFYZN3J0
「ところで何故僕が最初に色について話したと思う?」
彼は子供のように目を輝かせて聞いてた
「先入観はいかに事実を捻じ曲げられるか、という話しではないのかい?」
「それもあるけどね、先ほどから君の後ろにいるんだよ。赤いのが。」
「赤いの?」
「うん、多分女の子だね。顔はないよ。ただ赤い。君に片方しかない手で必死に抱きつこうとしている」
僕は彼の話を聞いて泣き崩れた
最愛の愛娘を不幸な交通事故で失ったのは一昨年の事だ
死後の世界があるのならと、必死でつてを使い色々各地を飛び回っていたのだ
僕は泣きながら彼が指差す方を抱きしめた。もちろん感触は無い
その後はひたすら泣きながら我が子の感触を求めて抱きしめていた
しばらくした後、そんな僕を見て彼はクスクスと笑いながらこう言った