洒落怖
解体

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725 5 sage 2012/04/07(土) 22:00:31.01 ID:6JC8dLJ00
車からロープと懐中電灯を持ってくると、穴の底に後藤の頭が出ていた。ホコリをかぶった額に
一筋血が溜まっているが、大きな怪我ではなさそうだ。
穴の底から魚を腐らせたような生ゴミのような異様な臭いがたち上ってくる。
「やっぱ防空壕みたいですよ、床は土だけど天井だけ木がはってある。ちょっと調べて見ます。
懐中電灯を貸してください。」
「おいやめとけ、ガスがあるかもしれんし危険だぞ。」
「なに、周りを照らしてぐるっと見回すだけですよ。」そういうことならと、
自分も床に腹ばいになって後藤の手のひらの上に懐中電灯をそっと落としてやった。
「うーん暗いし、嫌な臭いがする。これやっぱり昔の防空壕ですよ。壁も土のようです。」
「ふーん。これ埋める分の見積もりも必要なようだな。もういいだろロープ垂らすぞ。」

727 6 sage 2012/04/07(土) 22:01:46.10 ID:6JC8dLJ00
そのとき、後藤の声が緊迫したものに変わった。「ん・・・何かいます、なんだ大きいぞ。
こっちへ近づいてくる・・・赤い・・・何だ。ロープ、ロープ、ロープ早く。」
自分は牽引ロープの端を穴の底に投げ込んだ。「おいロープだぞ。はやくつかめ。」
穴の底から後藤の叫びが奇妙にゆがんで聞こえてくる。
「ロープどこだ、見えない。来るよ、こっちへ来るよ。ああ来る何だあれは・・・・う・・・だ。」
後藤の片方の手のひらが、穴の底でひらひらして消えた。最後の声は絶叫に近かった。
ブワッと穴からくる腐敗臭が強くなった。「おーい、どうしたしっかりしろー。」
穴の底に身を乗り出して叫んでも返事はない。自分は携帯で会社に連絡した。

728 7 sage 2012/04/07(土) 22:03:40.15 ID:6JC8dLJ00
ここからは後日談になる。残念なことに後藤は亡くなった。土壁に追い詰められたように半座りで
もたれかかっていたそうだ。致命的な外傷はなくガス中毒でもない。心不全ということになった。
穴は八畳間ほどの広さで後藤の言ったとおり高さは低い。しかし防空壕ではないようだった。
いつの時代のものかわからない穴。
その奥に元は赤い着物ですっかり朽ち果ててしまったどろどろの布きれ。古い食器類、大量の木の札、
燃え残った蝋、そしてそれにくるまれるようにしてバラバラの人骨。
そしてこれは後に警察の分析でわかったことだが、人骨は二体分。おそらく若い女性と1歳未満の乳児。
・・・最後にこれは書いていいかわからないが、女性の人骨に頭蓋骨は含まれていなかったそうだ。
その代わりに牛の頭骨。
警察はその古い人骨に関しては、とうに時効を過ぎているものであり事件とはならないと判断したそうだ。

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