洒落怖
花魁淵

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【花魁淵】
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塩○市の奥地、花魁淵に来ていた。今は深夜1時過ぎ。まだ少し昼の暑さが残っている。
この場所は、関東の西では有名なスポットだ。戦国時代、武田信玄の軍資金源となった
「黒○の金山」が近くにある。
武田氏滅亡の折、この金山の秘密を守るために、五十人以上居た近くの遊郭の花魁を集め、
張り出して設置した舞台もろとも、川に丸ごと沈めて皆殺しにしたという場所だ。

最後まで読むと祟られるという、碑看板の近くに止めて、車を降りた。

今回のメンツは、いつもの通り嬉々としてツアーを取り纏めたモリヤマくんを筆頭に、
男3人(モリヤマ・おいら・アシスタント仲間のAくん)と女2人(おいらの彼女・
Aくんの彼女Bさん)の編成だった。

言葉少なに、花魁の霊を鎮めるお堂までの道を降りる。周りの崖がどんどん高くなる。
中ほどまで来たとき、何かの囁く声が耳元で一瞬聞こえた。不安に思って辺りを見回す。
見ると、みんなも同様だった。みんなにも聞こえていたのか。いや、気づいたのは男3人
だけだった。女には聞こえなかったのか?何故だ?

「下見ろ、下!ライト消せ!」モリヤマくんが、おいらをつついて囁いた。
懐中電灯を消して、こそこそとしゃがみこみ、藪の中から崖の下を覗き込む。

まだ深い崖の底に、真っ黒な川が流れて、仄暗い淵を作っている。しかしほぼ真上にある
月明かりのおかげで、角度によってはテラテラと光る水面もあった。
ここからの距離は50メートルくらいか。

859 おいら ◆9rnB.qT3rc sage 2009/12/08(火) 23:29:01 ID:rvi3PRXO0
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水面に人影が見えた。岩じゃない。さっき崖の上から見たとき、そこには何も無かった。
その人影は、遠目には解りにくいが、髪は長く解け、襦袢を着ている様だ。女だ。
目が慣れてきた。向こうをむいて俯いているのが判る。顔は濡れ髪にも隠れて良く見えない。
それは、そのままの格好で、音もなく沈んだり浮かんだりしていた。

…生きている人間ではない。
この辺の水深は10メートルはある。深い淵なのだ。
何十人もの花魁を溺れさせ、皆殺しにしたくらいに。

目を凝らすと、次第にそれの体が、こちら側に向いてきているのが判った。
…気付かれたらお終いだ。暗い藪越しに、皆、息を潜めた。
それはしばらくして、浮き沈みを止めた。上半身だけ浮かべたまま静止している。
そして突然、それが顔を上げた。腐ったように黒い眼が、濡れ髪越しにおいら達を見ていた。

「うぅーーうーっ」
女性二人が、ほぼ同時に腹を抱えてうずくまった。おいらとAくんがそれぞれの彼女に
駆け寄った。
どうしたのか尋ねると、あの目を見た途端、急にお腹が痛くなってきたのだという。
おいらとAくんは顔を見合わせた。女二人同時にか?今この状況では、非常にマズい。

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  • 匿名 より:

    男共全員アホ

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