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「…ヤバい」
一人で、崖の下を注視していたモリヤマくんも、緊迫した顔で振り返った。
「気付かれた。今、岸を揚がった。崖を登ってる」
「下のお堂を抜けた…あいつ、こっち来るぞ!」
大慌てで今まで来た道を引き返そうとした。だが女性陣が動けない。可哀相だが、彼女を
無理矢理に急かした。AくんもBさんの手を引こうとして、悪戦苦闘してた。
でも、おいら達は30メートルも動けなかった。車まではまだ、だいぶ遠い。
さっきまで居た暗い藪が、ガサガサと揺れた。来る。このままでは追い付かれてしまう。
860 おいら ◆9rnB.qT3rc sage 2009/12/08(火) 23:31:26 ID:rvi3PRXO0
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「ダメー!お腹が痛くて動けないー!」彼女が泣き出してしまった。こっちは焦る。
こんなとこで泣いてられないだろ。仕方ない、背中を貸した。あそこまでおぶって走れるか?
「ここに連れてきちゃいけなかったんだ。女を」
荒い息で、横を走るモリヤマくんが言った。
「あいつは女に祟る。聞いた事があったのに、忘れてた」
強引にいくつも藪を抜け、車までの道をショートカットした。彼女をおぶって後ろ手に
組んでいるおいらの手がヌルヌルしているのに気付いた。うわーと思ったが、構うもんか。
駐車場の明るい所まで来て、5人とも力尽き、アスファルトの上に座り込んでしまった。
「…消えた。気配がしない」とモリヤマくん。あたりを伺っている。
「あいつ、消えた?マジ?大丈夫?」
「多分…」
モリヤマくんが言うのなら、大丈夫だろう。ホッとした。
駐車場の街灯の明かりで見ると、おいらの腕に血がベッタリと付いているのに気付いた。
彼女の脚も血に塗れていた。…そんなに傷が酷いのか、幾筋も血が流れている。
恥ずかしがってる場合じゃない。何処を怪我したのか調べるから、脚を見せろと言った。
「いや私、大丈夫だから…絶対だめ!」
「いいから見せろ!」
「ダメだったら…!」
押し問答の末、最初は拒んでいた彼女も、観念しておいらに従った。
だが、様子がおかしかった。
861 おいら ◆9rnB.qT3rc sage 2009/12/08(火) 23:33:03 ID:rvi3PRXO0
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彼女の何処にも怪我は無かった。AくんとBさんのカップルも同様だった。
かなり出血しているのに、痛がるところが無い。どういう訳か判らない。
おいらとAくんは、まさかとは思いながら、こっそりとそれぞれの彼女に聞いた。
「もしかして、アレか?」
彼女達は恥ずかしそうに、無言で頷いた。
ごめんなさい。聞くんじゃなかった。
一方、車のエンジンをかけながら、モリヤマくんはいかにも残念そうに言った。
「ここにも来なかった。もう帰りましょう。あ、席にはビニール敷いてね。汚れるから」
なんだこいつ。もうちょっとデリカシーというか、女性を気遣ってもいいだろう?
男共全員アホ