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176 84本 sage 2009/09/24(木) 17:41:41 ID:ZrfAIkvA0
……下りてみてすぐ気づいた。ここは地下1階じゃない。さっき乗った2階
のエレベーターホールだ。エレベーターは下に下りている感覚しかなかったよ
うに思うが、いったい?
心臓の鼓動が聞こえる。気のせいだと思い直して隣のエレベーターに乗る。
今度ははっきりB1のボタンを押す。体重が軽くなる。間違いなく下に向かっ
て下りていっているのがわかる。場所を知らせるランプは1階を過ぎ、地下1
階のランプがつく。胸をなで下ろす……しかし停まらない。地下1階のランプ
が消え、地下2階のランプがつく。心拍数が上がる。やがて地下2階のランプ
も消え、やや間があってエレベーターが停まる。扉が開く。
2階だった。見上げると確かに2階のランプがついている、いつの間にか。
177 84本 sage 2009/09/24(木) 17:42:32 ID:ZrfAIkvA0
もう半泣きだったと思う。いや泣き叫んでいたかもしれない。飛び出してさ
らに隣のエレベーターに乗る。B1を押す。扉を閉める。エレベータが動き出
す。停まる。扉が開く……2階だ。
心臓がえらいことになっている。無駄とは思いながら最後のエレベーターに
乗る。手が震える。振れ幅は20センチぐらいあったと思う。端で見ていたら多
分ぶざけていると思われると思う。ボタンが押せない。
腕に噛みついて、必死にB1のボタンを押した。扉が閉まる。
これで同じ結果だったら、俺はどうすればいいんだ。こういう日に限って、
携帯は家に忘れてきてしまっているし。
祈るように手を組みながらランプを見つめる。2……1……B1……停まっ
た。ランプはB1だ。地下1階に着いたのか?俺は助かったのか?扉が開く。
178 84本 sage 2009/09/24(木) 17:43:26 ID:ZrfAIkvA0
うちの学校は地下に体育館がある。地下1階のエレベーターホールの前には
体育教官室がある。大体いつもドアが開けっ放しで、奥のソファでくつろぐ体
育の先生たちの姿が見える。
扉が開いたエレベーターの中で俺は座り込んだ。前に広がるのは、一面の闇
だった。エレベーター内の明かりに照らされて、2~3メートル先まで白い床
が見える。それ以外は完全な真っ暗闇だ。もちろん体育教官室もない。「誰
か!」叫んだが反響すらない。
扉が閉まる。ボタンを押していないのに動き出すエレベーター。やがて2階
で停まり、扉が開いた。俺は力なく崩れるようにエレベーターから出た。
179 84本 sage 2009/09/24(木) 17:44:16 ID:ZrfAIkvA0
……もうダメだ。あの人形の元を通るしかない。ちなみに2階には理科室や
美術室などの特別教室があり、一般教室はない。したがって今は鍵がかかって
いてそれらの部屋には入れない。仮に入れたとしても、校舎自体が高層建築な
ので、窓は一切開かず、分厚い一枚ガラスが窓枠にはめ込まれているので、窓
から飛び降りることはできない。
相変わらず校舎内は静かだ。俺の鼓動だけがやかましく鳴り続けている。
覚悟を決めた。飛び越そう。
確か「あれ」は残り五~六段の所にあったはずだ。それよりさらに五~六段
上の所から一気に1階まで飛び降りてしまえばいい。もし足をくじいたとして
も、エントランスから外に出るのに10メートルぐらい。くじいたのが片足であ
れば、ケンケンでも一気に外に出られるだろう。