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沈黙。男はドアをじっと見詰めていたが、何の気配も窺えない。
なんだやっぱりとがっかりしたところで、 コンコン ノックは来た。
やった!男は怖がるどころかますます面白くなって、よぉし、コミュニケーションを
取ってやろうと思い立ち、
「あの、それじゃあ、今から幾つか質問したいと思うんですけど、
もしYesならノック1回、Noならノック2回で答えて貰えませんか」
と言ってみた。
すると、 コン ノックが返ってくる。
そこで、男はYes/NOで答えられる様々な質問をその幽霊にぶつけてみた。
性別やら、年代やら、そんなことをである。
思い付くことをあらかた聞き終えてしまった男は、最後に調子に乗ってこんなことを
聞いてみた。
974 本当にあった怖い名無し sage 2008/03/08(土) 05:59:52 ID:aGan7dOX0
「あのー、病気で亡くなったんですか?」
コンコン
「じゃあ、事故ですか?」
コンコン
「ええと、じゃあ…」
そこで男は、自分は聞いてはいけないことを聞いてしまったのではないか、
そう思い至った。病気ではない。事故でもない。それなら…。男に思い付くのは、
もう、あと一つしかなかったからである。男はゴクリと唾を飲んで、先程から
ノックが繰り返されるドアを、漸く恐ろしそうに見つめながら、
「殺されたんですか?」
と言った。
今までそれほど間を置かずに返ってきていたノックの音が暫く止んで、男がドアから
目を離せずにいるといきなり、
975 本当にあった怖い名無し sage 2008/03/08(土) 06:01:15 ID:aGan7dOX0
ドン!
と部屋の壁が叩かれた。男がぎょっとしてそちらの方を見ると、なおも、ドン!ドン!
ドン!ドン!壁を殴るような音が聞こえる。それも、最初に叩かれた箇所から
だけではない。四方の壁一面から、天井から、床から、 ドン!ドン!ドン!
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン! 音が聞こえる。それがどんどん早くなる。
それがどんどん大きくなる。凄まじい勢いで、凄まじい音で、四方八方から壁を
叩く音が聞こえ、部屋中に反響するそれに男はついに耳を塞いだ。
彼が覚えているのはここまでで、どうやらそのまま気絶してしまったらしい。
翌朝、先輩警備員に起こされた男は昨夜の出来事を必死になって説明したが、
殆ど相手にしてもらえなかった。ただ男が思うに、先輩の表情からして
何も思い当たる節がない、というわけでもないらしい。しかし結局何も
教えて貰えず、まさか心霊現象が起こるから此処を外してくれと言って
通る筈もなく、彼は今も警備員を続けているが、件のビルの時だけは、
深夜から早朝のシフトには入らず、また仮眠室にも決して近づかないと
決めているそうである。