この怖い話は約 3 分で読めます。
彼女の最後の数行で俺は次第に怖くなってきたけど、まだそうと認めるわけにはいかなかった。
5月8日
エミリー「外は凄く寒いけどジャンパーはまだ乾燥機の中に入ってる」
エミリー「外は凄く寒い」
エミリー「寒い」
エミリー「寒い」
エミリー「ネイサン」
エミリー「お願いだやめてくれ」
エミリー「寒い」
エミリー「凍える」
エミリー「何が起こってるのかわからない」
「凍える」という単語は彼女が初めて使ったオリジナルの言葉だった。ここから俺は悪夢を見るようになる。彼女が氷のように寒い車の中に閉じ込められていて、凍えて灰色をしているんだ。俺は温かい外にいてドアを開けるように彼女に叫び掛ける。彼女は俺がそこにいることにすら気づかない。たまに彼女の「足だけ」俺と一緒に外に出ている場合もある。
5月24日
ネイサン「スゴく酔っ払った」
ネイサン「会いたいよ」
ネイサン「誰がアカウントを操ってようと構わない」
ネイサン「仕事から帰ってくる度にパソコン越しにキミに逢えることを期待してる」
ネイサン「もうそろそろ慣れてもおかしくないだろ?」
エミリー「歩かせて」
俺は酔ってなんかいなかった。彼女はあまりイチャつきたがらず、「愛してるよ」なんて言い合あったり、抱きしめたり、お互いが特別な存在であることを話しあうことは彼女にとっては恥ずかしいことだったんだ。俺が酔っていればマシだったみたいで、よく酔ったフリをしてた。
彼女のこの返信で、彼女のページをメモリアルにする踏ん切りがついた。以前のコメントに比べれば大したこと無いかもしれないが、これは俺が彼女を友達のところから迎えに行こうかと提案していた会話からきてるんだ。
事故の際、ダッシュボードが彼女を押しつぶした。右のお尻から左の腿にかけて、斜めに体が分断されたんだ。彼女の足の1本は後部座席の下で見つかったそうだ。
少し戻って2012年8月7日(事故当日)
ネイサン「家向かってる?エミリー?」
ネイサン「このメッセージ見たらすぐ電話して」
ネイサン「仕事場に電話したら4時には出たって」
ネイサン「スゴく不安になってきた。お願い電話して」
ネイサン「エミリー、エミリー、電話に出て」
これは彼女が死んだ当日のログ。いつもなら4時30分には家に帰ってた。これといくつかのボイスメッセージが彼女が生きていると思って残した最後の会話。
なぜこれを見せたのかはもうすぐ分かる。
2014年7月1日
エミリー「このメッセージ見たらすぐ電話して」
エミリー「お願いだやめてくれ」
エミリー「仕事場に電話したら5時には出たって」
エミリー「スゴく不安になってきた」
エミリー「お願いだやめてくれ」
エミリー「寒い」
エミリー「エミリー、エミリー」
エミリー「電話に出て」
エミリー「何が起こってるのかわからない」
エミリー「寒い」
エミリー「凍える」
「歩かせて」というメッセージ以来、彼女のページをメモリアルにして、今日まで何も起きなかったし、写真にもタグ付けされなかった。