何でも怖い
トンネル

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320 : 本当にあった怖い名無し : 2012/05/05(土) 17:19:09.77 ID:U7aznJr40

281 名前は誰も知らない 2012/04/29(日) 21:01:29.44 ID:ENPrd3310

トンネルの入り口は汚れた背の低いガードレールでバリケードをつくっていただけで簡単に乗り越える事ができたが、内部に一歩入ると足首の近くまで水が溜まっていて、靴の中まで水浸しになってしまった。
俺はジーンズの裾を膝まで折り曲げて携帯のライトで周りを照らしてみることにした。
ライトを付け、辺りを見渡す。
携帯の弱いライトでは自分の周囲2、3メートルを確認するのがやっとだったが、足元の水は奥の方まで溜まっていそうだった。
一週間ほど前から雨の日が続いていたけど、それほどまでの豪雨ではなかったので、どこかから湧いて出た水が溜まっているのだろうと思った。

暗闇の中で一度、彼女の名前を大声で呼んでみたが返事はなく、張りつめた空気を切り裂く自分の声だけが虚しく響いて余計に恐怖が増した。
スニーカーと靴下は水を吸い重く何度も脱げそうになりながら、先を進む。
トンネルは俺が思っていたよりもはるかに長かった。
徒歩ではなく車やバイクで通ったとしても長く感じるだろうと思う。
街灯のないトンネルはまるで未開の洞窟か大きな防空壕みたいで、位置感覚が無く今自分がどの辺りを歩いているのかすら分からない。

この先に彼女がいる。そう俺は確信したのと同時に全身の毛穴が粟立つのがわかった。
彼女の着ていたシャツやスニーカーがちょうど一メートルほど先の水面で揺れていたからだ。
濡れたシャツを手に取って、雑巾のように絞っているときに特徴のある金ボタンを見つけて確信した。
絞ったシャツを片手に進んで行く。
この辺りから携帯の電池が残り少なくなってきたので、ライトを消して待受画面の光で周囲を確認するようにして進む事にした。
暗い、という事に徐々に慣れてきてはいたが、暗闇に目が慣れる事は無く、携帯の弱い光とシャツを握った方の手を前に突き出して周りを確認していた。
そのまま奥へと進んで行くと、
トンッと指先になにか固いものが触れた。

321 : 本当にあった怖い名無し : 2012/05/05(土) 17:19:36.69 ID:U7aznJr40

292 名前は誰も知らない 2012/04/29(日) 22:10:02.87 ID:ENPrd3310

行き止まりだった。恐らく厚い大きな板かなにかで強引に封鎖してあるようだった。
いないか。流石にこの深い闇の中に光もつけないで、1人でいれるわけがない。実際のところ俺自身、携帯のライトがこんなに頼もしく思えたのも初めてだったし、誰かが奥でライトを付ければ見逃すはずも無い。
はやく気づいておくんだった…..そう思った。
暫くその場に立っていると、自分がたてた水の音が止んで辺りが一瞬静かになった。
どこかから吹いてくる隙間風の静かな音に混じって、荒い鼻息が近くで聞こえた。
俺は何故かその時、すごく冷静で自分の左側から聞こえるその音の正体を確かめようと思った。恐怖でどこか麻痺していたんだと思う。
携帯を写真撮影のモードに切り替えてライトを付け、その音の方向を照らした

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