洒落怖
おっさん

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時間が時間だったこともあって、空気の冷たさとは違う寒さに
背筋が凍るような感覚だった。むかむかとするような圧迫感を
胃袋に感じながら、俺は右のミラーをちらとのぞき込んだ。

おっさんはいなかった。

安心していいのかよくないのかわからなかった。というか
「多分いないだろうな」と思ってミラーを覗き込んだので
やっぱりか、という確信に変わった。

ライダー仲間から時々も聞かされていた「通りすがりに見る」
というヤツなんだと思った。霊感は無いと思うが、オカルト系には
人並み以上に興味があるので「ついに俺も見ちゃったか」と
なんとも言えない気分だった。

656 647 sage 2007/06/02(土) 17:00:18 ID:ndC234M50
おっさんの横を通り過ぎるときこそ法定速度をはみ出していたが
速度を戻しつつ、俺は頭の中で「やだなー」を繰り返しながら
走り続けていた。やがて道路は分岐にさしかかり県境の大きな橋へ
向かう道へと入る。普段なら一段と車も少なくなってくるのだが
今日は先導にトラックと乗用車がいたので、俺は怖さも手伝ってか
なんとなく車間を詰めておこうと思い、トラックの後ろにつけて
伴走状態でその道を走り続けた。

しばらく走っていると、なんとなく後味こそ悪かったものの
人に話すネタが出来たなあなんて思い始めていた。
が、そんなお気楽な考えは、橋の方へ向かう分岐に来たときに
あっさりなくなった。またいたのだ。「おっさん」が。

三度目ともなると絶対に見間違いなわけはなかった。
しかも今度は街灯がある。先導車両の明かりもだ。
おっさんは左折する分岐の曲がり角のところに立っていた。
俺はもう「うわーうわー」と小声に出しながら運転を続けていた。

このまま橋を渡るには、おっさんの真横を通らなければならない。
道を変える為に車線変更をしようかどうかと迷っていると
先導のトラックが左ウインカーを出したので、なんとなく
「このままトラックについて行けば大丈夫だ」と思い
俺もそのままウインカーをだした。

657 647(終) sage 2007/06/02(土) 17:04:07 ID:ndC234M50
キープレフトの原則を無視して俺はなるべく右寄りに走った。
トラックの右リアタイヤが真っ正面にくるくらいだ。
もちろん気休めに過ぎない。左側をなるべく見ないようにした。
分岐のカーブの手前でトラックが減速する。
おっさんの横を通り過ぎるタイミングで、トラックのエンジンが
再加速のために轟音をあげた。

何事もなかった。実際何事もなく、俺は無事に橋を渡って家に
着くことができたのだが、家に帰って布団に潜り込んでもなお
しばらくの間震えが止まらなかった。

おっさんの横を通り過ぎた後、一気に速度をあげて法定速度を
あっさり無視した速度で残りの道を走ってきたことで身体が
冷え込んでいたこともあったが、原因はそれだけじゃなかった。

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