洒落怖
美人画

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311 名前: 本当にあった怖い名無し 2006/08/03(木) 13:30:03 ID:huijBN2t0
415 名前:古物商 投稿日:01/10/03 12:33
皆さんお元気でしょうか? 今日も続きを書き込みたいと
思います。

さて、店に戻った我々は改めてその美人画を見つめ直しました。
絵は女が立て膝でだらしなく座っている様を描いてます。
女は下級遊女でしょう。乱れた高髷に簪が1本、櫛1本。ほつれた髪が
艶かしい。麻の衣は細い縦縞に朝顔の図柄。これをざっくりと羽織り、
帯を無造作に腰に巻いている様は夏の情事の後でしょう。
裾が乱れ真っ白な太股が見えます。まるでその奥の秘所迄見えそうです。
女は袂で顔を被い、口元は見る事は出来ません。
「……………」
私達は言葉を失いました。乱れ髪の描写の細やかさ、螺鈿の櫛の緻密さ、
着物の鮮やかさ! これだけの仕事ができる絵師は一体何者でしょう?
…ただ…何か…嫌な…落ち付かない感じがするのです。
深夜、何も理由がないのに急に不安がもたげて来る…そんな感じです。
理由は“目”でした。我々に流し目をくれる切れ長の細い目のその眼は、
針の先で突いた点の様に小さいのです。
相棒も同じ事を感じていたのでしょう、さっと絵を巻取ると、元の箱に
納めました。そして私に言いました。
「なんか…なんというか…」「嫌な感じだろ!?」「うん…ちょっとな。
もう遅いし今日はここ迄にするか」
たいして遅くもないのに相棒はそう言うと、さっさと車に乗り込み、
帰宅して行きました。私も店の照明を落とし、自宅のある2階へと戻った
のです。そして変異はその夜から起り始めました。

312 名前: 本当にあった怖い名無し 2006/08/03(木) 13:30:39 ID:huijBN2t0
430 名前:古物商 投稿日:01/10/03 19:23
続きです

その夜の事です。私は祖母の夢を見ました。私が生まれる前に逝去し、
会ったこともない祖母ですが、仏壇の遺影と同じ服装で祖母だと
分かりました。一つ違うのは遺影の祖母は白黒写真ですが、目の前の
祖母はカラーでした。
祖母が悲しそうな顔で私に話し掛けようとした瞬間、けたたましい
電話のベルに飛び起きました。電話は相棒の奥さんからでした。
「こんな遅くにどうしたんですか?」
「○○(相棒の名前です)が…交通事故を起こして…意識不明の重体で…」
泣きじゃくる奥さんを制して事情を聞くと、相棒は車で電信柱に突っ込み、
頭を強打して頭蓋骨骨折。今、病院の集中治療室で生死の境を彷徨っている
とのことです。
「一体どこでそんな?」「それが深川なんです。何故そんなとこで…」
「深川!?」私はつい奥さんの話を遮ってしまうくらいの大声を出して
しまいました。
「とにかくすぐそちらに行きますので」「いえ。面会謝絶ですので来て
頂いても…容態が変わったらすぐお知らせしますので」
私は重い気持ちで受話器を置き、びっくりして見つめている妻に事情を
話し、眠れぬ夜を過ごしました。幸い容態急変の電話はありませんでした。

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