洒落怖
実録・八墓村な落ち武者がいた

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これは数年前の話である。高校時代の同級生Bから電話があった。
Bは親の家業の農家を継いでいる。
「なあ、今日うちでバーベキューしないか?」
「んああ、お前のところ田舎だろ、今車持ってないし」
「大丈夫、Cのやつが途中で乗せてってやるってさ。あいつもバーベキュー
 楽しみにしているからさ」

そいうわけで、僕はBの住んでいる田舎まで行くことになった。
Cが来たのは午後4時前だった。車は初代のホンダクロスロードだ。 クロスロードに乗った僕はCに
「へえー、クロスロードとかすごいじゃん。これレンジローバーだろ?」
「ああ、親父の車でな、近道していくぞ」
そういうわけで、カーステレオで僕が好きなセルジュ・ゲンズブールのベストアルバムを
聞きながら、Bの家にまで行く近道を入った。
トンネルを通り過ぎると廃墟がかなり並んでいた。僕は道路を見ると
ルーマニア系の美女が歩いていた。

「へえ珍しいな」
と僕はにやける。
それから数キロ走ると、さっき出会ったルーマニア系の美女にあった。
顔をよく見ると顔が血まみれだ。
真っ青になっていたCはクロスロードを飛ばす。
その時ドンという音がした。

振り返ってみると、火だるまの女がいるではないか!
僕たちは急いでクロスロードを飛ばし、近道を通り抜け国道に入った。
なんとか、Bの家に着いた。家には高校の同級生が何人かいた。
「あれお前ら遅かったな?」
Bにニヤケながら言う。僕は事情を説明した。
「ふーん廃墟のところだろ?」

「ああ」
「お前らルーマニアの落ち武者って知っているか?正確にはルーマニアの落ち
 ノーメンクラツーラなんだが」
Bは僕たちに平成になって間もないことのことを話した。

1989年のルーマニア革命が起こって、ルーマニアのノーメンクラツーラや
セキュリターテがこの田舎に逃げ込んできた。
田舎の住民は夜も眠れず過ごした。そんな時、反共主義者の県議会議員から
「やつらは、この地上から消し去るべき、自堕落で、宿無し同然で、残忍で恩知らずな人種である。」
「小さいのも大きいのも、すべて殺して頭の皮を剥ぐべきです。卵はシラミになりますから。」
と一笑しながら言った。

次の日、警察と地元の青年団が一緒になって落ちノーメンクラツーラ狩りを行った。
隠れ家に行くと落ちノーメンクラツーラは白旗を掲げた。しかし青年団は突然、落ちノーメンクラツーラに発砲した。
警察署署長はこの無差別虐殺の命令として、警察官や青年団たちにこう叫んだ。
「殺せ! どいつもこいつも頭の皮を剥げ。大きいのも小さいのもだ。シラミの幼虫はシラミになるからな!」
警察官や青年団がこの隠れ家に突入し、男も女も子供も問わず、無差別銃撃を浴びせた。
人々は散りぢりになり、走り始めた。
女子供は泣き叫びながら後の山の方へ逃げた。丸腰の男たちは抗議しながらシェルターへと退却した。
警察官や青年団による無差別銃撃は、午後になっても続けられた。セキュリターテは交戦を試みたと言うが、
人数も武装も足りず、戦闘と呼べるものではなかった。老若男女を問わない皆殺しだった。

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  • 匿名 より:

    胸糞

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