生物・妖怪

この怖い話は約 3 分で読めます。

俺はこの状況に混乱しながら、後部座席の2人を安心させるように「ほら、山だから
こういう事もあるさ」と言ってエアコンを暖房にした。内心かなり不安だったが…
T幸も「あと20分かそれくらいでふもとの町中につくから、そうすればまた暑くなるな!」
と無理に元気な振りをしている。
ぶっちゃけ無理しているのがバレバレだったが…

548 本当にあった怖い名無し sage New! 2011/06/26(日) 00:25:46.61 ID:rfZFHv4u0
それから暫らくして、暖房をつけているにも関わらず、車内はどんどん寒くなっていき
まるで真冬のようになってきた。息を吐くと息が白いし、なんだか耳や足の指などの
末端部分が痛くなってき始めた…
暗くなってきたのでよく見えないが、“それ”はまだ車から10m程度の距離を保ちながら
追ってきているようだ。
どう考えてもこの寒さは尋常ではない、あきらかに追ってきているあの謎の物体が
関係している。

M衣が「H奈ちゃんだいじょうぶ?ねえ?」とH奈に声をかけている。
H奈は「大丈夫…」と言っているが、明らかに声が弱弱しく、なんかぐったりしている。
寒さのせいなのかそれとも他に原因があるのか。とにかくH奈はかなりヤバそうで、
ガタガタ震えながらM衣に寄りかかっている。
その寄りかかられているM衣もガタガタ震えていて、こちらも大丈夫というわけでは
なさそうに見えた。

その時、T幸が「もうだめだ、もう運転できない!」とハンドルから両手を離し車を止めて
しまった。
俺はT幸に「なんで停めるんだよ!今停めたらヤバイだろ!」と言ったが、T幸は
ガタガタ震えながら「もう無理だ!手が…」といって両手を脇の間に挟んでいる。

俺もかなり寒くて、まいっているのだが、どうもT幸はそれ以上にきつそうだ。
そこで、「T幸、俺が運転代わるわ、一端下りろ」と言った。
そして俺も車を降りたのだが…
外はあり得ない寒さだった。冬なんてもんじゃない、耳、手足の指先が刺すように
痛い、鼻で息をすると鼻の中が一瞬凍るのがわかる、それくらい寒い。

大急ぎで俺はT幸と交代し、T幸が助手席に乗ったのを確認してハンドルを握った。
その時、T幸の言っていることの意味が解った。
ハンドルがまるで氷を触っているみたいに冷たい、とても長時間触っていられるよう
な冷たさではない。
バックミラーを見ると、“それ”はまだ10mくらいの距離を保って止まっている。

549 7 sage New! 2011/06/26(日) 00:26:27.76 ID:rfZFHv4u0
俺はダッシュボードをあけると、中にある布や紙をありったけ取り出し、それで
手をぐるぐる巻きにすると無理矢理ハンドルを握り、車を発進させた。
更に走っていると、M衣が「ねえ…H奈ちゃんの様子がおかしい、どうしよう…」と震えて
弱弱しい声で言ってきた。
H奈は何かうわ言のように「大丈夫…大丈夫…」と言っている。
T幸が「後ろに俺の上着があるはずだから、とにかくそれを着せてやってくれ…」
と同じく震えながら言った。
H奈は早く何か処置しないとヤバそうだ…

この怖い話にコメントする