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古い旅館

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引っ張られたかどうかは覚えていませんが、私はパニックになり、両足であたりかまわず思い切り蹴りまくりました。
バタバタ暴れながら、とにかく湯船を出て上から見渡しましたが、そこには誰もいませんでした。

信じてもらえないかもしれませんが、こんな怖い思いをすれば叫びながら裸で浴場を飛び出ていきそうなものですが、
恥ずかしい思いは時に恐怖心を上回るのか、私はとりあえず手短に体を洗い終え、流石に湯船には入らず浴場を出ました。
鏡はできるだけ見ないようにして洗いましたが、半泣きでした。

部屋に戻ると布団がきれいに敷かれていて、二人は普通にくつろいでいたようでしたが、戻った私を見て何事もなかったか聞いてきました。
私は最初に起きたことと、今浴場で起きたことを二人に話しました。
仕事柄もありますが、私たちは今までの出来事を整理しました。(SEは論理的に物事を整理して考える癖みたいのがついているのです)
1.最初に私のからだをゆすった奴(夢の可能性あり)
2.血だらけの顔でもがいていた女(夢の可能性あり)
3.湯船につかっていた男(二人が見ている)
4.鏡に映っていた男(村田が目撃)
5.私の足をつかんだ手(男湯だから男?)
少なくとも複数の幽霊らしきものが立て続けに出没したことになります。

412 本当にあった怖い名無し sage New! 2013/08/24(土) 22:47:04.95 ID:IoFDoXcaP
5.
誰かに恨まれるようなことはないか、旅の途中変なことはなかったか、など私たちは話し合いましたが思い当たる節はありませんでした。
女将さんに相談することも考えましたが、あんまり失礼なこともできませんよね。
自分で言うのも何ですが、私たち3人は皆比較的穏やかな性格でした。。
たぶん一番怖い思いをしたのは私だと思いますが、悪いことをしていなければ何も恐れることはない、という信念がありましたので、二人にそう言い聞かせて、とにかく一晩頑張ろうということになりました。
この時、私は幽霊というかそういうものの存在を少し信じるようになっていました。

ちなみにテレビはありましたが、離れのためか室内アンテナで映りが悪く見られません。
何か人工的なものがないと怖かったので、これも雑音がひどかったですが、ラジオをかけっぱなしにしていました。
気がつくと外は雨になっていました。窓を打つ雨の音、時折聞こえるヒューという風の音。
普段はなんのことはない音ですが、こういう時は結構恐怖なもので、誰かが窓を叩いているような、そんな錯覚に陥りそうでした。

11時をすぎ、私たちは電気を消してみな布団に入り、話すともなく話をしていました。
そのうち村田が会話に入ってこなくなりました。多分寝入ったのでしょう。
私もいつの間にか睡魔に襲われて、うとうとしだしていた時、突然金縛りにあってしまいました。
それまで金縛りは幾度となく経験がありましたが、この時は格別に恐怖でした。
なぜなら初めて幻聴を聞いたのです。「ぎゃぁーーーーー、ぎゃぁーーーーー」
体が動かず息もできない状態で恐ろしい女の声だけが繰り返されていました。
うまく表現できませんが、キャーではなく肉体を切り裂かれたときに出すような悲鳴でした。
金縛りは不思議なもので、その時は夢ではないと思っているのですが、ふと目が覚めるのです。
心臓はバクバク状態で、とにかく早く上体を起こさないと再び金縛りに入るのは過去の経験でわかっていましたので、頑張って状態を起こしました。

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