師匠シリーズ
病院

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51 病院 ラスト  ◆oJUBn2VTGE ウニ New! 2006/10/15(日) 20:47:05 ID:lY9MF+tv0
所詮は臨時の事務職だ。
でもその日、人の命に関わる仕事をしたという確かな感触があった。
鬱々と、下を向いてばかりでなくてよかった。
人の死を、興味本位で語るばかりじゃなくてよかった。
こんな、夜の緊急訪問はよくあることらしい。でも俺にとって、特別な意味
がある気がした。
だから、カルテを届けたあとまた事務所に帰ってレセプト請求をすべて完成
させるのに、全精力を傾けられたのだろう。

次の日、あまり寝てない瞼をこすりながら出勤すると、所長が「お疲れ様。
昨日は大変だったわね」と話かけて来た。
俺は、「いえ、このくらい」と答えたが、所長は首を振って「やっぱりあなた
には向いてない職場かもね」と優しい声で言うのだった。
俺はそのあと、2週間くらいでそのバイトを止めた。
いい経験になったとは思う。
でも、人の死をあれほど受け止めなければならない職場は、やはり俺には向
いてないのだろう。
俺があの夜、カルテを届けた人はその日の朝に亡くなった。
そしてその死を看取ったナースは、すぐに次の訪問先へ向かった。また、その
肩に死者の一部を残したままで。

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