師匠シリーズ
田舎

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909 田舎 前編  ◆oJUBn2VTGE ウニ 2007/03/07(水) 19:47:40 ID:OPG460nV0
大学1回生の秋。
その頃うちの大学には試験休みというものがあって、夏休み→前期試験→
試験休みというなんとも中途半端なカリキュラムとなっていた。
夏休みは我ながらやりすぎと思うほど遊びまくり、実家への帰省もごく短い
間だった。
そこへ降って沸いた試験休みなる微妙な長さの休暇。
俺はこの休みを、母方の田舎への帰省に使おうと考えた。
高校生の時に祖母が亡くなってその時には足を運んだが、まともに逗留すると
なると中学生以来か。母の兄である伯父も「一度顔を出しなさい」と言ってい
たので、ちょうどいい。
その計画を、試験シーズンの始まったころにサークルの先輩になんとはなしに
話した。
「すごい田舎ですよ」
とその田舎っぷりを語っていたのであるが、ふと思い出して小学生のころに
そこで体験した「犬の幽霊」の話をした。
夜中に赤ん坊の胴体を銜えた犬が家の前を走り、その赤ん坊の首が笑いながら
後を追いかけていくという、なんとも夢ともうつつともつかない奇妙な体験だ
った。
先輩は「ふーん」とあまり興味なさそうに聞いていたが、俺がその田舎の村の
名前を出した途端に身を乗り出した。
「いまなんてった?」
面食らって復唱すると、先輩は目をギラギラさせて「つれてけ」と言う。
俺が師匠と呼び、オカルトのいろはを教わっているその人の琴線に触れるもの
があったようだ。

910 田舎 前編  ◆oJUBn2VTGE ウニ 2007/03/07(水) 19:48:47 ID:OPG460nV0
伯父の家はデカイので一人二人増えても全然大丈夫だったし、おおらかな土地
柄なので友人を連れて行くくらいなんでもないことだった。
「いいですけど」
結局師匠を伴って帰省することとなったのだが、それだけでは終わらなかった。
試験期間中にもかかわらず俺は地元のオカルト系ネット仲間が集まるオフ会に
参加していた。
そんな時期に試験があるなんてウチの大学くらいなわけで、フリーターや社会人
が多いそのオフ会はお構いなしに開かれた。それなら参加しなければいいだけ
の話のはずだが、オカルトに関することに触れている時間がなにより楽しかった
そのころの俺は、あたりまえのようにファミレスに足を運んだのだった。その後
の2年間の留年の契機がもう始まっていたと言える。
「試験休みに入ったら、母方の田舎に行くんスよ」
そこでも少年時代の奇妙な体験を披露した。
反応はまずまずだったが「子供のころの話」というフィルターのためか、オカル
トマニア度の高い方々のハートにはあまり響かなかったようだ。すぐにそのころ
ホットだった心霊スポットであるヒャクトウ団地への突撃計画へ話が移っていっ
た。
ところがそれを尻目に、ある先輩がつつッと俺の隣へやってきて「おまえの田舎
は四国だよな」と言う。
オフでも「京介」というネット上のハンドルネームで呼ばれる人で、ハッとする
ほど整った顔立ちの女性だった。俺はこの人に話しかけられると、いつもドキド
キしてそれに慣れることがない。
「そうです」
と答えると、真面目な顔をして「四国には犬にまつわる怪談が多い」と言った。

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