サイコ
マネキン

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私はよほどマネキンについて聞こうと思いました。
彼女たちはあれを人間扱いしているようです。
しかもケーキを出したり、服を着せたりと上等な扱いようです。ですが、F美もおばさんも、マネキンに話しかけたりはしていません。
彼女たちはあれを何だと思っているのだろう?と考えました。
マネキンの扱いでは断じてありません。
しかし、完全に人だと思って、思い込んでいるのだとしたら、「彼」とか「あの人」とか呼んで、私たちに説明するとかしそうなものです。
でもそうはしない。
その、どっちともとれない中途半端な感じが、ひどく私を不快にさせました。
私がマネキンのことについて尋ねたら、F美は何と答えるだろう。
どういう返事が返ってきても、私は叫びだしてしまいそうな予感がしました。

421 名前:かおる 投稿日:02/02/07 00:54

どう考えても普通じゃない。

何か話題を探しました。
部屋の隅に鳥かごがありました。
マネキンのこと以外なら何でもいい。
普通の、学校で見るようなF美を見さえすれば、安心できるような気がしました。

「トリ、飼ってるの?」
「いなくなっちゃった」
「そう・・・かわいそうね」
「いらなくなったから」

まるで無機質な言い方でした。
飼っていた鳥に対する愛着などみじんも感じられない。

もう出たい、と思いました。
帰りたい、帰りたい。
ここはやばい。
長くいたらおかしくなってしまう。

その時「トイレどこかな?」とS子が立ち上がりました。
「廊下の向こう、外でてすぐ」とF美が答えると、S子はそそくさと出ていってしまいました。
そのとき正直、私は彼女を呪いました。
私はずっと下を向いたままでした。
もう、たとえ何を話しても、F美と意思の疎通は無理だろう、ということを確信していました。
ぱたぱたと足音がするまで、とても長い時間がすぎたように思いましたが、実際にはほんの数分だったでしょう。
S子が顔を出して「ごめん、帰ろう」と私に言いました。
S子の顔は青ざめていました。
F美の方には絶対に目を向けようとしないのでした。
「そう、おかえりなさい」とF美は言いました。
そのずれた言い方に卒倒しそうでした。

422 名前:かおる 投稿日:02/02/07 00:56

S子が私の手をぐいぐい引っ張って外に連れ出そうとします。
私はそれでもまだ、形だけでもおばさんにおいとまを言っておくべきだと思っていました。
顔を合わせる勇気はありませんでしたが、奥に声をかけようとしたのです。
F美の部屋の向こうにあるふすまが、20センチほど開いていました。
「すいません失礼します」
よく声が出たものです。
その時、隙間から手が伸びてきて、ピシャッ!といきおいよくふすまが閉じられました。
私たちは逃げるようにF美の家を出ていきました。

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