占い・おまじない、呪い
魔漏

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すぐに、隣室のRが、続いて義父と義母が飛び込んできて、三人がかりでA美を
取り押さえた。両手足を封じられたA美は、狂人の如く?いて、義父の腕に齧り付く。
義父は、すぐに逃れたが、腕には鮮血が迸り、深い口創が刻まれた。
それでも、三人は何とか、荒れ狂うA美を御し、紐で何重にも柱に括り付けた。
A美は、大きく目を剥いて私達を睨み、頭を激しく振回して「殺してくれるわ!!」
と、大声で喚き続けた。時折、おぞましい声で泣き叫んだ。

朝になって、義父がH神社の宮司に電話をかけ、宮司が家に駆けつけた。
宮司は、暴れる妹の姿を見て苦笑しながら、「あれはどこだね?」と義父に尋ねた。
義父は、私と夫に、「何か御守の様な物をもらったか?」と訊いた。
私は、飾り棚の上から例の御守を取ってきて、宮司に渡した。
「やはり。こりゃ、マモリだ。」宮司はそう呟き、H神社でA美に処置を施すからと、
義母に同行を求め、すのこで妹を簀巻きにして、車に載せて去って行った。
一行を見送った後、義父が突然、Rを怒鳴りつけた。「お前が一緒に居たんだろうが!!」
夫は下を向き、唇を噛んだ。

250 (5/7) sage 2005/12/18(日) 01:27:30 ID:Uuc6/hu60
「あれは、「魔漏」つー物だ。」
義父は、私にそう告げ、何処で手に入れたか説明を求めた。
私が、初詣の状況を詳しく伝えると、「やはりG神社なぁ。」義父は溜息をついた。
「Rには、幼少からこの町の歴史や伝承を教えたんだがなぁ。御霊信仰(ゴリョウシンコウ)は
只の言い伝え程度に思ってたか?」私は、昨晩夫が眉を顰めたことを思い出した。

義父は淡々と語った。
「G神社は、本来、御霊信仰から興った。禍津日神(マガツヒノカミ)を祀ることで災厄を抑え、逆
に、邪悪な神力を政に転用するものだ。それを、戦後の神道指令を契機に、H神社の一神
である火産霊神を主に祀り、禍津日神を境内社に祀ることで、事実上、そこに封じ込めた。」
その時、黙っていた夫が口を開いた。
「禍津日神を頼んで、あの一角には幽世(カクリヨ)に行けず現世(ウツシヨ)に迷う怨霊が集まる。」
義父は、深く頷いて、話しを続けた。
「そう。でも、だから参拝するなつーことではないよ。あの社で禍津日神に祈りを捧げれ
ば、禍力は鎮まるし、本来、御霊や怨霊の類は境内社の外には出られん。だが、その目的
を理解せずに参拝すると、おかしなことになる。」義父は暫く私を見つめ、言葉を続けた。
「授与所が在ったと言ったね。年老いた巫女が魔漏を配っていたと。」
私は頷いた。「あの境内社に、授与所なんぞないよ。」義父は、そう言って苦笑した。

「あそこで他の神に祈れば、禍津日神が怒り、禍を増長させる結果になる。」
義父が、諭す様に私に言った。
「だが、禍霊共が外に出るには媒体が必要だ。魔漏は、その代表だよ。その巫女は神霊の
権化かも知れん。若しくは、町の何者か。昔からここに居る者の中には、未だに御霊信仰
に傾倒する者も皆無ではない。」義父は、私に、初詣中にA美に異変があったか訊ねた。
私は、妹がおかしな声を聞き、何かに怯えていたこと、腰を痛がっていたことを伝えた。
義父は、「曲霊(マガツヒ)の好き嫌いもあるからなぁ。」と呟いた。
そして、言った。「A美ちゃんは波長が合ったのかね、霊に気に入られたんだなぁ。
で、そ奴は、魔漏に入り込み、まんまと境内社の外に出て、A美ちゃんに取り憑いた。」

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