洒落怖
呼ぶ声

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俺には弟がいるんだが、これがちょっと変わり者でな。
なにもない空間に酷く怯えたり、辺りに水気はなにもないのになぜかびしょ濡れだったりと
とにかく不思議な奴だった。
そしてこの弟も関わる、とある事件をきっかけに俺は友人を失った。
これは俺の、今でも後悔してる話だ。

弟が小学5年生だった頃の話。
仲間内で夏休みを利用して、自転車で少し遠くの方へ冒険に行こうという計画があった。

俺の田舎はそこまで過疎という訳でもなく、自転車さえあれば
普通に賑わってる所には行けるし、買い物や娯楽に特別不便があるという訳でもない。
だが都会と言われる所からの転校生が来た事をきっかけに、
田舎の子供達は「都会」に憧れを持つようになったのだ。
特に俺がその影響をモロに受け、今回の計画も俺が発案した事だったので
道案内役も買って出た。
メンバーは4人。俺と友人2人と俺の弟。
なぜ弟を連れてきたのかメンバーは疑問に思っていただろうが
そこは俺に計画があったからである。

433 :呼ぶ声 2/5 ◆lEMchm76dQ @\(^o^)/:2014/06/23(月) 19:48:33.60 ID:UE7okzaK0.net
表向きは冒険と言っても、実は心霊スポット(っぽい)所を回る秘密のツアーを計画してた訳で、
弟を用意したのは、つまりは保険である。
薄々だが弟には本当になにか得体の知れない物が見えてるんじゃないか?という疑問を抱いてた時であり、
なにかあったら弟が反応して盛り上げてくれるだろうという勝手な考えで、弟を騙して連れて来た訳だ。

そんな裏計画を知らずに都会への憧れに自転車を漕ぎながらはしゃぐ2人の馬鹿共。
弟は俺の邪悪な笑顔に気が付いていただろうが自転車の後ろという事もあり、なにも言えないでいた。

辺りが暗くなるまで自転車を漕ぎ続け
ここが目的地だ、とボロボロの大きな廃病院を紹介するとそれぞれ上々の反応を示してくれた。
その後の自分達の運命を悟ったのか、馬事雑言がそこら辺に飛び散る。
それらを跳ね除け泣きそうな弟をひっぱり入り口前に立ちこの病院がなぜ潰れたのかを語った。

『この病院はな、ある少女を医療ミスという形で死なせてしまったんだ。だが当時それに関わった医者は全員それを認めなかった。』
急に語りだした俺を見て友人達は静かになり、
入り口のドアをこじ開け中に押し入る俺の後に渋々ついて来た。

『その事件以来、病室、トイレ、待合室、どこにいても彼等は誰かの声が聞こえるようになった。』
暗い廊下に散らばったゴミなどを押しのけ、語りながら歩いてる俺の懐中電灯の光を頼りに皆進む。

434 :呼ぶ声 3/5 ◆lEMchm76dQ @\(^o^)/:2014/06/23(月) 19:50:27.17 ID:UE7okzaK0.net
『四六時中聞こえてくるその声にだんだん耐えれなくなった医者達は次第におかしくなっていったんだ。』
割れたガラスを踏む音や友人の息使いなどが妙に雰囲気を醸し出す。

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