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Bの部屋に到着し、落ち着こうと思い煙草に火をつけた。
そしてBも落ち着いたのだろう。
ひきつった笑いで
「あの部屋どうすんの?」
そう聞いてきた。
「無理。あそこでは住めない」
俺はそう答えるしかなかった。
その晩は二人ともこれ以上の会話はなかった。
一晩Bの部屋で過ごし、その日が土曜日という事もあり週末をBの部屋にいる事にした。
二人とも会話もないまま昼飯を食っていると、Bの部屋の電話が鳴った。
Aからだった。
今からBの部屋に来たいという。
「きっと昨日の話が聞きたいのだろう。」
Bはそう言いながら受話器を置いた。
それから2時間程経過したころAはやってきた。
Aはやけに嬉しそうに
「二人ともここに居るって事は逃げたの?」
そう言うといきなり真顔になり、
「情けなさすぎないか?」
それを聞いたBは怒りだし
「見えねー奴にはわかんねーだよ!!」
今にも掴みかかりそうなBをなだめ、俺はAに
「俺達二人が簡単に逃げ出したことあったか?他の奴がビビって逃げ出しても俺達は逃げたことなんてねーんだぞ。
お前もそれはよく知ってんだろ?その俺達二人がここにいる、それだけで理解できねーか?」
俺もかなり切れそうになるのを、押さえながらまくしたてた。
そして落ち着いた所で昨日のことを、Aに説明し俺は二度とあの部屋には戻らない事をAに告げた。
するとAは
「仮に戻らないとしたら新しい部屋を借りなきゃいけないんだろ?そしたら自腹で借りる事になるんじゃねーの?
馬鹿げてる、何で起こるはずのない現象にビビってそんな無駄金を使う必要があんだよ?」
今度は逆にAのほうが切れそうだった。
その時俺は思った。
見えない人間、理解しない奴にしてみればどれだけ馬鹿げた事か、居るはずのない物に対して怯え、挙げ句の果てには逃げだそうとしている。
Aには理解できるわけないか。
話が進んでいくとAは俺に向かいながら
「俺が確認する。それだけの事が起こるなら俺にも見えるはずだろ?そしたら俺も納得するよ」
Aのその言葉を聞いたとき俺は、
『あれだけはっきりした現象が起きたんだ。
いくらAに霊感がなくても少しは何かを感じ取れるかもしれない。
もしAに見る事ができたら逃げ出す気持ちも分かるだろう』
と思った。
でもそれが全ての間違いだった。
それから三人は、9時頃に俺のアパートに付くように調整しながら向かうことにした。
それでもBはかなり嫌がっていたのだが・・・。
8時40分、思ったよりも早く付いた。
心なしかAは楽しそうだった。
階段を上り部屋の前に付いた時Aの表情が変わった。
それはまるで喧嘩の前の表情だった。
俺はAに
「喧嘩でもしそうな顔だな?」
と言うとBは
「やめねーか?やっぱ今までと違いすぎんだよここは」
Aはそれを聞いて
「いつものBはどうしたよ?喧嘩の時はそうじゃねーだろ?いつものお前らしくもねー」
そう吐き捨てるように言いながら
「ならお前はここにいればいい。開けるよ」
Aは俺に相づちをうちドアを開けた。
何事も無いかのようにAは台所をすぎ、6畳間に進んで行き、俺もその後を追い部屋に入った。
「何ともねーじゃん」
俺を見ながらAは笑い出した。
しかしAの笑いもそこまでだった。
笑っているAを見て俺はたじろいだ。
Aの背にしているガラス戸の向こうであの得体のしれない奴がまたここを見ている。
すでに言葉にならない俺はAの背後を指さし、それに気づいたAもガラス戸に視線を移した。
きっと見えたであろうAは俺のほうに後ずさりしている。
後ずさりしてきたAの肩が俺の肩とぶつかる。
俺は必死に声をだし
「窓から逃げるぞ」
そして二人で窓に向かった。
窓は昨日のままで開いている。
二人が動いた瞬間今度は逆に窓が閉まってしまった。
行き場を失った二人は、そこに立ちすくむ事しかできない。
立ち尽くして居ると、Aの様子がおかしくなってきている。
いきなり怯えながらその場に座り込んでしまい、
「やめて!やめてくれ!!」
そう叫びながら何かを振り払おうとしている。
『Aは何を見ているんだ?』
そう思いAの振り払おうとしている場所を俺は目を凝らして見ようとしたが、俺には見えない。
俺に見えるのはガラス戸の向こうに居る奴だけ。
Aはまったく別のものを見ている。
俺は必死にAをなだめた。
でもどんどん酷くなっている。
Aの普通ではない声を聞いて、Bが玄関を開けてくれた。
とっさに俺はBに
「そこの盛り塩をここに投げろ!!」
そう叫んだ。
Bは塩を取り、一直線に投げてくれた。
その瞬間得体の知れない奴は消えた。
そして俺はAを担ぎ上げて玄関に向かい、何とか部屋を後にした。
Aを担いだまま階段を下り、一旦その場におろしAの様子を見た。
だがAの怯えは止むことはなかった。
Aの様子を見て俺は病院に連れていくことにした。
しかしBは
「医者には何て言うんだよ」
泣きそうになりながらいった。
「でも俺達にはなにもできない。だから連れていこう。」
Bをなだめながらそう言うのがやっとだった。
